ワラビー萎縮症に強い飼料用トウモロコシ一代雑種の新親品種「Mi116」

要約

飼料用トウモロコシの親品種「Mi116」(エムアイヒャクジュウロク)は、九州での早晩性が"中生の晩"の自殖系統で、ワラビー萎縮症抵抗性が強く、ワラビー萎縮症抵抗性の一代雑種(F1)品種の親として利用できる。

  • キーワード:トウモロコシ、自殖系統、中生の晩、ワラビー萎縮症、飼料作物育種
  • 担当:九州沖縄農業研究センター・畑作研究領域・トウモロコシグループ
  • 代表連絡先:q_info@ml.affrc.go.jp、Tel:096-242-7682
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

飼料用トウモロコシは、九州では温暖な気候を利用して4月上旬から5月中旬にかけて播種する春播きのほか、イタリアンライグラス収穫後の5月中旬から6月中旬に播種する晩播、春播きトウモロコシ収穫後の7月下旬から8月上旬にかけて播種する夏播きが行われている。しかし、夏播きでは、大きな減収要因のワラビー萎縮症が発生する危険があり、温暖化にともないその被害地域の拡大、時期の早期化、萎縮症状の激化が懸念される。そこで、ワラビー萎縮症被害を回避できる抵抗性F1品種を育成するため、その親として利用できるワラビー萎縮症抵抗性自殖系統を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「Mi116」はワラビー萎縮症抵抗性F1品種「SH5937」を母材として自殖固定し、雌穂の特性、「Mi91」とのF1組合せの収量性、ワラビー萎縮症抵抗性などで選抜、育成した自殖系統である。
  • 「Mi91」に比べてワラビー萎縮症発症個体率、萎縮個体率とも低く、ワラビー萎縮症抵抗性である(表1)。
  • 「Mi91」を種子親、「Mi116」を花粉親とするF1品種「なつひむか」のワラビー萎縮症発症個体率、萎縮個体率は抵抗性市販品種「30D44」及び「SH5937」と同程度で、「Mi116」を親にしてワラビー萎縮症抵抗性F1組合せを作出できる(表1)。
  • 絹糸抽出期は「Mi91」並で、九州での早晩性は"中生の晩"である(表2)。
  • 稈長、一列粒数、百粒重は「Mi91」並、着雌穂高は「Mi91」より低く、粒列数は「Mi91」よりやや少ない(表2)。子実収量は「Mi91」と同程度で、隔離圃場における放任受粉下での採種量は24.1 kg/aである(表2)。
  • 倒伏個体率は「Mi106」より少なく、「Mi91」と同程度かやや少ない(表2)。耐倒伏性は「Mi91」並の"強~極強"である。
  • 南方さび病抵抗性罹病程度は抵抗性"極弱"の「Mi29」に比べ低いが、抵抗性"強"の「Mi29SRR」に比べ高い(表3)。南方さび病抵抗性は"中~強"である。
  • 「Mi91」との特定組合せ能力は高い。「Mi116」とのF1 品種「なつひむか」の収量は、夏播き用の普及品種と同程度以上の水準にある(表4)。

成果の活用面・留意点

  • ワラビー萎縮症抵抗性の飼料用トウモロコシF1品種の親として利用できる。

具体的データ

表1 ワラビー萎縮症抵抗性検定試験(親(上段):2015-2016年,F1(下段):2014-2016年)?表2 一般生育特性,雌穂の特性及び耐倒伏性(2013-2014年)?表3 南方さび病抵抗性検定試験(2015-2016年)?表4 「Mi116」を花粉親とする単交雑F1品種「なつひむか(Mi91×Mi116)」の特性(2012-2015年)

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(温暖化適応・異常気象対応)
  • 研究期間:2009~2015年度
  • 研究担当者:村木正則、伊東栄作
  • 発表論文等:村木、伊東「Mi116」品種登録出願第31333号(2016年7月15日)