高糖度で食味が優れる、紫肉カンショ新品種「ふくむらさき」

要約

カンショ「ふくむらさき」は塊根にアントシアニンを含む紫肉色の品種である。「パープルスイートロード」より蒸しいもの糖度が高く、肉質は中~やや粘質でしっとりとした食感を持ち、蒸しいもや焼きいもの食味が優れる。

  • キーワード:カンショ、アントシアニン、紫いも、高糖度、良食味
  • 担当:九州沖縄農業研究センター・畑作研究領域・サツマイモ育種グループ
  • 代表連絡先:電話0986-24-4270
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

塊根にアントシアニンを含み紫の肉色を示すカンショは、沖縄県や鹿児島県の島しょ部では古くから親しまれ、食用とされてきたが、その他の地域では食用としての歴史は浅い。色素原料用の「アヤムラサキ」や焼酎原料用の「ムラサキマサリ」は、原料としての特性は優れるが食味が劣り、蒸しいもや焼きいもとして食べるには不向きである。現在、沖縄県を除く地域で食用として最も普及しているのは「パープルスイートロード」であるが、黄肉色のカンショに比べると甘味が不足していることから、食味の良い紫肉色のカンショに対する要望が高まっている。そこで、育成地では、糖度が高く食味の優れる紫肉色品種の育成を進めてきた。

成果の内容・特徴

  • 「ふくむらさき」は、高糖度で食味の優れる「九系255」を母、食用アントシアニン品種の「パープルスイートロード」を父とする交配集団から選抜した品種である。
  • 「高系14号」および「パープルスイートロード」と比べて上いも1個重が軽く、上いも収量は劣るが、蒸しいものBrixが高く、食味が優れる(表1)。
  • 萌芽性は"中"、貯蔵性は"やや易"であり、アントシアニン色価は「パープルスイートロード」を上回る(表2、図1)。
  • 焼きいもの食味官能評価では、「パープルスイートロード」と比べて肉質はやや粘質で、食感および甘さが「パープルスイートロード」より優れており、総合評価が優れる(図2)。
  • サツマイモネコブセンチュウ抵抗性は"中"、ミナミネグサレセンチュウ抵抗性は"やや強"である(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 茨城県において焼きいも用として生産される見込みである。
  • 上いも1個重が軽いため、早掘りを避け、充分な生育期間を確保するよう努める。

具体的データ

図2 焼きいもの食味官能評価

その他

  • 予算区分:交付金、競争的資金(農食事業)
  • 研究期間:2004~2017年度
  • 研究担当者:甲斐由美、小林晃、境垣内岳雄、末松恵祐、吉永優、高畑康浩、境哲文、片山健二、藤田敏郎
  • 発表論文等:甲斐ら「ふくむらさき」品種登録出願第33033号(2018年4月16日)