連携・多角化の効果が把握できる6次産業化シミュレーターLASTS(ラスツ)

要約

6次産業化シミュレーターLASTSは、6次産業化の取り組みを対象とした経済効果の数値化・売上シミュレーションのための、Microsoft Excelで動くプログラムである。LASTSによる分析結果をもとに、取り組みの評価、課題の掘り起こしや改善案の検討を行うことができる。

  • キーワード:6次産業化、経済評価、シミュレーション
  • 担当:九州沖縄農業研究センター・作物開発利用研究領域・6次産業化グループ
  • 代表連絡先:電話 029-838-8015
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

6次産業化に関して、既存の経済評価法では、フードシステムのどこでどのくらいの価値が生じているかを分析できない。また、売上が伸び悩んだり利益が少なかったりといった課題を有する6次産業化の取り組みに対しては、どこに課題があり、どのように改善すべきかを提示する必要がある。そこで、6次産業化の経済効果の数値化による評価を可能にするとともに、取り組みの課題の掘り起こしや売上シミュレーションを行うことができる6次産業化シミュレーターLASTS(The simulator to be Linked Agriculture to Secondary and Tertiary Sectors)を開発する。

成果の内容・特徴

  • LASTSはMicrosoft Excelで動くプログラムである。LASTSは農業に主眼を置いた分析手法であり、図1に示すように、6次産業化の課題の解明や、連携・多角化の経済効果を評価することができる。さらに、連携や多角化を見直した時の売上予測や、経済効果を大きくするための指導・コーディネートのためのツールとしてLASTSを使うことができる。LASTSでは、農商工連携と農業の多角化を合わせたものを6次産業化とし、どちらも分析することができる。基本的には地域内の異業種との直接的な連携や農業の多角化の効果を分析するためのプログラムであるが、必要なデータが入手できる場合はバリューチェーン上の取引関係の分析も可能である。LASTSの詳細な説明は発表論文等4)を参照のこと。
  • LASTSによる分析を行うために必要なデータは、連携相手・多角化部門の名称、業種、商品名、単価、単位、販売数量、売上、加工・販売に関わる連携相手・多角化部門の組み合わせである。地域内の課題や経済効果を明らかにするためには、地域内の主体のみを分析対象とし、販売先など地域外の主体は省略できる。表1に示すように、連携相手・多角化部門の組み合わせは、連携・多角化している場合を[1]、していない場合を[0]で表現したGTYPEと呼ばれる形で入力する。データを入力すると、プレミアムが自動的に算出される。プレミアムは、取り組みのどの段階で、どの程度のプラスアルファの価値がついているかを示す指標である。
  • 表1は、≪データ入力表≫の例である。≪データ入力表≫をもとに、課題の解明や連携・多角化の経済効果を評価することができる。課題の解明については、プレミアムの数値が指標となる。プレミアムが0.00以下となる場合は、その連携相手・多角化部門に経済的な課題があり、連携・多角化関係やその連携相手・多角化部門の商品価格を見直す必要がある。連携・多角化の経済効果の評価には、農業の寄与の数値を用いる。農業の寄与は、値が大きいほど、多角化部門・連携相手の農業生産への貢献が大きいことを意味する。
  • 表2は、≪結果画面≫の例である。15通りの連携・多角化の組み合わせごとに、売上予測値と総合利得が表示される。総合利得はGTYPEごとの経済効果を表す指標であり、数値が大きいほど大きな経済効果が期待できる。連携や多角化を見直した時の売上予測については、見直し前と見直し後のGTYPEの組み合わせをもとに売上予測値を比較し、意思決定の参考とすることができる。総合利得による指導やコーディネートについては、行政機関等が、このデータと地域資源をもとに、より大きな経済効果を生む組み合わせを解明し、指導等に活かすことができる。

普及のための参考情報

  • 普及対象:6次産業化に関わる生産者・加工業者・販売業者等のステークホルダー、行政・普及機関の担当者、研究者、コーディネーター等。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等: 18件15都道府県(2019年12月2日時点、申請中を含む)。
  • その他:動作OS: Windows、MacOS、Android4.4以上、iOS11.0以上(要Microsoft Excel)。
  • 利用マニュアルは、利用者・利用機関のほか、希望者に対して配布している。
  • 6次産業化シミュレータ-LASTSは、「農商工連携の経済的パフォーマンス評価法」(研究成果情報(大西ら(2018))をもとに開発。

具体的データ

図1 LASTSの活用例,表1 「データ入力表」の例,表2 「結果画面」の例

その他

  • 予算区分:交付金、競争的資金(科研費)
  • 研究期間:2014~2019年度
  • 研究担当者:大西千絵、森嶋輝也、河野恵伸
  • 発表論文等:
    • 大西ら(2017)農業経営研究、55(2):1-12
    • 大西(2018)職務作成プログラム「6次産業化シミュレーターLASTS」、機構-P06
    • 農研機構 (2018)「6次産業化シミュレーターLASTS
    • 大西(2020)農業経済研究、92(1): 82-87