気象情報を利用して水田圃場の給排水を最適化・自動化するスマート水管理ソフト

要約

予報値を含んだメッシュ農業気象データと発育予測APIを利用して、水田の適正な水管理スケジュールを作成するソフトウェアである。圃場水管理システムに組み込むことで、栽培期間を通じた給排水の自動化および水田水温シミュレーションに基づいた高度な水管理を実現することができる。

  • キーワード:イネ、水田水温、発育モデル、水管理、メッシュ農業気象データ
  • 担当:農業環境変動研究センター・気候変動対応研究領域・温暖化適応策ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-8240
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

水稲栽培において、労働時間の約3割を占めている毎日の水管理は、分散した多くの圃場を管理する生産者にとって大きな負担となっている。また、水管理は生産者の経験や勘による部分が大きいため、多数の品種や作期を組み合わせた水稲栽培では、従来のような各圃場での丁寧な水管理の実施が困難な状況にある。そこで、品種や気象条件に応じた毎日の最適な水深、灌漑時刻等の水管理のスケジュールを自動作成し、近年普及が進んでいる給排水の遠隔操作システム(圃場水管理システム)に組み込んで利用できるソフトウェア(通称:スマート水管理ソフト)を開発する。

成果の内容・特徴

  • 本ソフトウェアは、給排水バルブ制御、テンプレート管理、スケジュール作成、スケジュール調整、最適給水時刻計算の各種プログラムから構成される。作成されたスケジュールをもとに、給排水バルブ制御を通じて、圃場水管理の遠隔化や自動化が可能である(図1)。
  • スケジュール作成では、栽培期間を最大10期間に分割し、各期間の区切りを発育ステージと紐付け、さらに各期間の水管理法を4種類(一定水深、間断灌漑、深水管理、排水)の中から選択することで、全期間のスケジュールを簡単に作成することができる。作成されたスケジュールをテンプレート保存することで、他の移植日や地域に適用することができる。デフォルトで全国の典型的な水管理暦に応じた7種類のテンプレートを備えている(図2)。
  • 対象圃場の地点と品種を登録することで、メッシュ農業気象データと水稲発育モデルに基づいた発育予測情報をApplication Programing Interface(API)を通じて取得し、出穂期や成熟期の予測値に応じて、水管理のスケジュールを自動的に調整できる。また、当該日の気象情報(最高気温・最低気温)から水田水温シミュレーションに基づいて水田水温を最も高く/低くする最適な給水時刻がLook Up Table(LUT)により計算される。毎日の給水時刻には、定時刻(1~24時)またはこの最適給水時刻を選択することができ、日々の給排水のスケジュールに反映できる(図2)。
  • 本ソフトウェアは、オープンソースの汎用プログラム言語であるPHPで記述されており、スマートフォン、タブレット等での簡易なタッチ操作のみで全ての設定ができる。また、その基礎となるプログラムは基本的な関数や制御文のみで記述されているため、比較的容易に技術移転が可能である。本ソフトウェアを、圃場水管理システムに導入することで、これまで手動では困難だった深水管理や飽水管理などの複雑な水管理、あるいは水田水温シミュレーションに基づいた高度な水管理を実施することができる(図3および図4)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:水稲生産者、民間企業、普及指導機関
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:農研機構の圃場水管理システム115台に実装済み。企業等への技術移転により、全国でさらに200~300台程度への実装を予定。
  • その他:ソフトウェア内のプログラムから得られる最適なスケジュールの情報は手動の水管理に反映させることも可能であり、生産者に直接あるいは指導機関を通じた普及も期待される。

具体的データ

その他

  • 予算区分:交付金、その他外部資金(SIP)
  • 研究期間:2014~2018年度
  • 研究担当者:丸山篤志、若杉晃介、鈴木翔、坂田賢、桑形恒男、大野宏之、佐々木華織、中川博視
  • 発表論文等:
    • Maruyama A. et al. (2017) Water Res. Res. 53(12):10065-10084
    • 若杉ら(2018)農業農村工学会誌、86(4):289-292
    • 丸山(2018)職務作成プログラム「気象情報を利用した圃場水管理スケジュール作成プログラム」、機構-X02