安定性と再現性が確保されたリンゴの品種識別技術マニュアル

要約

ISO 13495に基づき、試験室内妥当性試験により安定性と再現性が確認されたリンゴの品種識別技術マニュアルでは、リンゴで開発された12種類のSSRマーカーを用いて主要なリンゴ47品種・系統の識別が可能である。

  • キーワード: リンゴ、SSRマーカー、品種識別、DNA、遺伝子型
  • 担当: 果樹茶業研究部門・品種育成研究領域・ゲノムユニット
  • 代表連絡先: 電話 029-838-6453
  • 分類: 普及成果情報

背景・ねらい

わが国で育成されたリンゴ品種の海外流出およびその生産物の海外からの流入は、今後の国内のリンゴ生産に大きな影響を与える可能性があるため、育成者権や生産者の保護に向けてリンゴの品種識別技術の確立が求められている。そこで、リンゴを対象に品種識別に有効なSSRマーカーを用いたDNA品種識別技術マニュアルを作成し、その技術の試験室内妥当性試験により安定性と再現性が確認された信頼度の高い識別方法の開発を図る。

成果の内容・特徴

  • 果樹茶業研究部門で育成された27品種・系統を含む合計47のリンゴ品種・系統の品種識別に利用可能である(表1)。
  • 既報のリンゴのDNA品種識別技術に用いられる17種類のSSRマーカーの中から、種苗管理センターにおける再現試験の結果を踏まえて、波形が安定している12種類のマーカーを選択し、作成した品種識別技術マニュアルである。
  • リンゴの品種識別に利用可能SSRマーカーは、CH01b09b、Hi22d06、Hi15h12、Hi08h08、Hi09f01、NZmsEB119405、NZmsCN943067、NZmsEB116209、NZmsEB146613、SAmsCN944528、SAmsEB132187、Mdo.chr1.18の12種類で、プライマー配列、反復モチーフ、増幅サイズ範囲、座乗染色体などを表2に示す。Fプライマーは蛍光標識、Rプライマーの一部には波形を安定させるテイル配列(gtttctt)が付加されている。
  • ISO 13495(食品-特異核酸を使用する品種同定法の選択原理及び妥当性確認基準)に基づき、種苗管理センターで実施されたリンゴの品種識別マーカーの試験室内妥当性確認により、マーカーの安定性と再現性が評価されている。

普及のための参考情報

  • 普及対象:品種育成者権所有者、農業・食品関連試験研究機関、農業・食品関連行政機関、食品検査業者、食品加工業者
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:多様な組織で利用されることが期待される。
  • その他:開発したリンゴの品種識別技術マニュアル「SSRマーカーによるりんご47品種のDNA品種識別技術」の詳細は、種苗管理センター品種保護対策課(Email: hinsyu_gmen@naro.affrc.go.jp)に問い合わせることで入手可能である。SSRマーカー分析により、果樹茶業研究部門が2015年に品種登録した最新のリンゴ品種「ルビースイート」、「ローズパール」の識別が可能である。SSRマーカーによる遺伝子型判定には、蛍光DNAシーケンサーを用いる変性電気泳動が必要である。種苗管理センターで実施する品種類似性試験には10マーカーが使用されているが、識別精度を独自に評価した上で判定に用いることを推奨する。

具体的データ

表1 品種識別可能なリンゴ47品種・系統(下線は農研機構育成),表2 SSRマーカーの特徴

その他

  • 予算区分: 交付金
  • 研究期間: 2014~2016年度
  • 研究担当者:
    山本俊哉、成田知聡、後藤洋、木村鉄也、押野秀美、國久美由紀、寺上伸吾、西谷千佳子
  • 発表論文等:
    成田ら(2016)DNA多型、24(1):108-111