初期成長期のブタの骨格筋における塩基性アミノ酸トランスポーターの発現量

要約

初期成長期のブタの骨格筋では、塩基性アミノ酸トランスポーター1(CAT-1)の発現量は1日齢から26日齢に減少し、CAT-2の発現量は成長に伴って増加する。またCAT-1の発現量は筋肉部位によって差がないが、CAT-2の発現量は筋肉部位によって異なる。

  • キーワード:ブタ、骨格筋、塩基性アミノ酸トランスポーター、初期成長
  • 担当:畜産研究部門・家畜代謝栄養研究領域・豚代謝栄養ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-8684
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

塩基性アミノ酸トランスポーター(CATs)は、ブタ用飼料の第一制限アミノ酸であるリジンならびにアルギニン、ヒスチジンを輸送する。初期成長期には骨格筋が成長すること、アミノ酸の要求量が変化することから、骨格筋におけるCATsの発現量は初期成長期に変化すると考えられる。しかし、ブタでは骨格筋だけでなく他の臓器におけるCATsの発現について不明な点が多い。そこで本実験では、ブタの骨格筋3部位と9臓器におけるCATsのmRNA発現量を明らかにし、さらに初期成長期のブタの骨格筋3部位におけるCATsのmRNA発現量をあきらかにすることを目的とする。

成果の内容・特徴

  • 同腹子5頭×6腹の計30頭のLWD交雑種のオスおよび去勢オスブタを供試し、26日齢までは母乳を、45日および75日齢では各成長ステージの栄養要求量を満たした飼料を自由摂取させる。各腹から1頭ずつ1、12、26、45、75日齢時にと畜し、胸最長筋、菱形筋、大腿二頭筋、胃、十二指腸、回腸、空腸、結腸、肝臓、腎臓、心臓、大脳を採取する。リアルタイムPCR法でCAT-1、CAT-2およびCAT-3のmRNA発現量を測定し、NormFinder softwareにより選別したリファレンス遺伝子(ribosomal protein L4、hypoxanthine phosphoribosyltransferase 1、hydroxymethyl-bilane synthase)により発現量を補正する。また、組織間の発現量の比較は、2-ΔΔCt法により算出する。
  • ブタでは、CAT-1のmRNAは調べたすべての臓器で発現するが(図1)、CAT-2のmRNAは骨格筋と肝臓で発現量が高く、発現量が低いものの空腸、回腸、腎臓、心臓で発現する。CAT-3のmRNAは空腸、回腸、結腸、大脳で発現する。
  • ブタ骨格筋(胸最長筋、菱形筋、大腿二頭筋)における初期成長期のCAT-1のmRNA発現量は、1日齢が最も高く、12日齢には有意に低くなり(図2左)、その後75日齢まで同じレベルで推移する。この変化は3つの骨格筋部位で同じパターンである。
  • ブタ骨格筋における1日齢から75日齢のCAT-2 mRNA発現量は、1日齢が最も低く、12日齢で有意に増加し、その後も成長にともなって増加し、75日齢がもっとも発現量が高い(図2右)。この変化は3つの骨格筋部位で同じパターンである。
  • 骨格筋の3つの部位で比較すると、いずれの日齢でもCAT-1のmRNA発現量は骨格筋間で違いがないが、CAT-2のmRNAは12日齢以降で骨格筋によって発現量が異なり、胸最長筋が最も高く、次いで大腿二頭筋、菱形筋の順である。

成果の活用面・留意点

  • 本知見は、ブタにおけるアミノ酸輸送体の基礎的知見であり、ブタのアミノ酸栄養状態への適応に関する研究につながる。
  • 本研究は、mRNA発現量を測定しており、塩基性アミノ酸トランスポーターのタンパク質の発現量を測定した結果ではない。

具体的データ

図1 26日齢ブタの各組織におけるCAT-1 mRNA発現量(胸最長筋を1とした);図2 ブタ胸最長筋における成長に伴うCAT-1 mRNA(左)、CAT-2 mRNA(右)発現量の変化

その他

  • 予算区分:交付金、競争的資金(科研費)
  • 研究期間:2011~2013年度
  • 研究担当者:石田藍子、芦原茜、中島一喜、勝俣昌也
  • 発表論文等:Ishida A. et al. (2017) Amino Acids 49(11):1805-1814