モバイルGISアプリを用いて荒廃農地を効率的に把握

要約

モバイルGISアプリ「iGIS」が搭載されたiPadとGoogle Earth Proで作成されたプリントを携帯し、iGISの背景(Google Earth画像)に台帳農地や前年の調査で荒廃農地とされた農地等のデータを重ねて表示させて踏査すると、荒廃農地を効率的に把握できる。

  • キーワード:荒廃農地、農地台帳、モバイルGIS、Google Earth、タブレット端末
  • 担当:農村工学研究部門・農地基盤工学研究領域・農地利用ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-7677
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

2016年の農業委員会法の改正により、農地利用最適化推進委員が農業委員会に設置されることになった。同委員の任務の一つが荒廃農地の発生・解消状況に関する調査(農林水産省農村振興局長通知;毎年実施の実施である。この調査は市町村内のすべての農地が対象であり、踏査に多大な労力を要している。そこで、同委員が荒廃農地を効率的に把握できるように、モバイルGISアプリ「iGIS」(Geometry社)が搭載されたタブレット端末「iPad」(Apple社)とGoogle Earth Pro(Google社)で作成された調査用プリントを携帯して荒廃農地調査の踏査を行う手法を開発し、マニュアルを作成する。

成果の内容・特徴

  • GISソフト「ArcGIS」(ESRI社)とGoogle Earth Proを用い、図1のような流れで、iGIS(iPadに搭載;図2)へのGISデータの装備と調査用プリント(図3)の作成を行う。
  • iGISに装備するGISデータは、農地台帳に所在(大字・地番)が記載されている土地(以下、台帳農地)、前年の調査で荒廃農地とされた農地、荒廃している可能性のある農地(以下、荒廃可能性農地)等のShapeファイルである。このうち荒廃可能性農地のShapeファイルは、(1)台帳農地のShapeファイルをKMZファイルに変換、(2)それをGoogle Earth Proで開き、航空写真画像に台帳農地データ(筆界ポリゴン)を重ねて表示、(3)目視判読により荒廃可能性農地を抽出、(4)そのKMZファイルをShapeファイルに変換、という手順で作成する。また、調査用プリントは、(1)iGISに装備する各ShapeファイルをKMZファイルに変換してGoogle Earth Proで開き、航空写真画像に各データを重ねて表示、(2)図郭毎にスクリーンショットを作成、(3)それをA3サイズで印刷、という手順で作成する。
  • 踏査時にiGISが搭載されたiPadと調査用プリントを携帯し、iGISの背景(Google Earth画像)に台帳農地、現在地(GPS情報)等のデータを重ねて表示させる。そして、荒廃農地が見つかれば、iGISでそれがどの台帳農地に該当するのかを特定し、調査用プリントにペンで記録する、あるいは、iGISで台帳農地データ(筆界ポリゴン)をタップしてその所在を読み取り、野帳に記録する。この踏査手法はモバイル端末の操作に不慣れな者でも利用できる。荒廃農地調査で活用すれば、踏査の効率化を図ることができる。
  • 作成したマニュアルには、図1に示した作業の詳細(データ作成を担当するGIS技術者向け)とiGISの利用方法(踏査実施者向け)が記載されている。

成果の活用面・留意点

  • 本手法は、荒廃農地調査の他、多面的機能支払交付金の交付対象農地の現況調査(荒廃していないかどうか現地確認)においても活用されている。
  • iGISは、30万筆もある地番図のShapeファイルを装備してもスムーズに動作するので、固定資産の現況調査においても活用されている。また、土地改良区の土地原簿に記載されている受益農地の管理においても活用されている。

具体的データ

図1 iGISへのGISデータの装備と調査用プリントの作成に関する作業の流れ;図2 iPadのiGIS画面;図3 調査用プリント

その他