人工光閉鎖型育苗と水耕栽培等によるトルコギキョウの年3作周年生産技術体系

要約

人工光閉鎖型育苗装置による大苗の計画生産と、NFT水耕栽培、病害対策、および複合環境制御システムを用いることで、1棟のハウスで年3作の栽培が可能である。ハウス3棟を用い、栽培期間を組み合わせることで周年生産ができる。

  • キーワード:トルコギキョウ、人工光閉鎖型育苗、水耕栽培、複合環境制御、周年生産
  • 担当:野菜花き研究部門・花き生産流通研究領域・生産管理ユニット
  • 代表連絡先:電話029-838-6811
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

トルコギキョウは周年需要があり安定供給が求められている。しかし、従来の生産体系では播種から収穫まで6か月以上を要すること、また、連作障害も発生しやすいことから土壌消毒等が必要とされ、同一圃場での年2作以上は困難である。トルコギキョウの生産量を増やしてマーケットを拡大するためには、より効率的な生産体系の構築が必要である。そこでトルコギキョウの周年生産を可能とする新たな技術体系を開発する。

成果の内容・特徴

  • 人工光閉鎖型育苗装置による大苗の計画生産、NFT水耕栽培、病害対策、および複合環境制御システムを用いることで、1棟のハウスで年3作のトルコギキョウの生産が可能となる。3棟のハウスを用いて栽培期間を組み合わせることで、周年生産できる。
  • 10℃暗黒5週間の給水種子低温処理後に、人工光閉鎖型育苗装置において光合成光量子束密度75~125μmol・m-2・S-1、20時間明期、気温27.5℃の条件で5週間育苗し、本葉3対の大苗を生産する(図1)。同一装置で年間9回の育苗が可能である。成長の抑制をもたらすロゼットが発生しないことを、多数の品種で確認している。
  • 培養液を循環利用する薄膜水耕(NFT)方式を用いる。500Lの培養液タンクの場合、幅60cm長さ20mのベンチ7本を1ブロックで栽培できる。条間株間12cm、5条の定植パネルで年3作すると、慣行2180本/aの3倍の6600本/aの生産が可能である。培養液濃度は原水分を除いてEC0.5~1.5mS/dの範囲とし、チップバーンを回避するために発蕾までは低濃度で管理し、発蕾後に濃度を高めて開花開始後は施肥を打ち切る。培養液温度は20~30℃の範囲で管理する(図2)。
  • 根腐症状によって壊滅的な被害を発生するピシウム菌については、施設内外の衛生管理を徹底するとともに定期的にモニタリングして発症前に検出し対策を講じる。登録農薬および培養液の交換等、対策マニュアルに沿って対応することで生産が安定化する。
  • 光強度と二酸化炭素濃度を元に目標温度を算出し、窓や機器を制御する複合環境制御システムにトルコギキョウの光合成特性値を組み込んだ温室環境の自動制御システムを開発している。このシステムの運用によって熟練生産者が機器の動作を個別に設定する慣行管理と同程度の品質の切り花が得られ、エネルギーコストも同程度となるうえ省力化が可能である。

普及のための参考情報

  • 普及対象:花き生産者、生産法人等
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国で利用可能なシステムである。育苗装置と温室環境の自動制御システムは、それぞれ土耕栽培でも利用が可能である。
  • その他:福島県いわき市の13.5aのハウス3棟において、これらの技術を組み合わせて2016年6月から2017年8月までに年3作9回の定植と出荷を実証している(図3)。水耕栽培によるトルコギキョウの周年出荷は全国初の事例である(図4)。個別技術については「トルコギキョウ周年生産のための新技術カタログ集」を参照。ピシウム菌等のモニタリングや簡易検定は「トルコギキョウ水耕栽培における土壌伝染性病害対策マニュアル」を参照。

具体的データ

図1 人工光閉鎖型育苗条件と苗の形状;図2 トルコギキョウの生育パターンと培養液管理のイメージ;図3 実証圃場における年3作ハウス3棟を組み合わせ9回出荷の実績;図4 実証圃場におけるトルコギキョウのNFT水耕栽培状況


その他

  • 予算区分:その他外部資金(地域再生)
  • 研究期間:2013~2017年度
  • 研究担当者:福田直子、佐藤衛、牛尾亜由子、川勝恭子、湯本弘子、水野貴行、中野明正、矢吹隆夫(福島県農業総合センター)、福島啓吾(広島県立総合技術研究所農業技術センター)、時安美奈(広島県立総合技術研究所農業技術センター)、景山幸二(国立大学法人岐阜大学)、嶋津光鑑(国立大学法人岐阜大学)、菅野英夫((株)いわき花匠)、猪狩広生((株)いわき花匠)、坂井田洋司(揖斐川工業(株))、中南暁夫(三菱ケミカルアグリドリーム(株))、狩野敦((株)ダブルエム)、都丈志((株)ダブルエム)
  • 発表論文等:
  • 1)地域再生花き生産コンソーシアム(2018)「トルコギキョウ周年生産のための新技術カタログ集」http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/pub2016_or_later/pamphlet/tech-pamph/080058.html (2018年3月1日)
    2)地域再生花き生産コンソーシアム(2018)「トルコギキョウ水耕栽培における水媒介性病害対策マニュアル」http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/pub2016_or_later/pamphlet/tech-pamph/080059.html (2018年3月1日)