フレキシブルコンテナに破砕穀実を滞りなく詰めるための破砕物振り分け作業体系

要約

飼料用穀実を破砕する際に、破砕物を振り分ける工程を組み込めば、11t/h程度の破砕能率を継続しながら逐次フレキシブルコンテナ(フレコン)を入れ替えて、「フレコンへの投入」→「満杯フレコンの移動・集積」の一連作業を行うことができる。

  • キーワード:穀実サイレージ、破砕、振り分け、フレコン、フレコンラップ法
  • 担当:東北農業研究センター・畜産飼料作研究領域・飼料生産グループ
  • 代表連絡先:電話019-643-3556
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

農研機構東北農業研究センターが開発した穀実サイレージの調製法(フレコンラップ法:2017年度普及成果情報→10104_01_普及URL)においては、「破砕」→「破砕物のフレコンへの投入」→「満杯フレコンの移動・集積」→「ラッピング」の順で作業を行う。このうち最初に実施する「破砕」の作業能率は最大11t/h、また最後に実施する「ラッピング」の作業能率は最大20t/hときわめて高い。この作業能率の高さを、調製作業全体の効率化に生かすには、両作業を繋ぐ「破砕物のフレコンへの投入」→「満杯フレコンの移動・集積」の工程を効率的に実施することが不可欠である。そこで、この工程の能率を大きく低下させる要因である「フレコン入れ替え時の破砕機の停止」を行うことなく、連続的に作業を続けるための振り分け器および作業体系を開発する。

成果の内容・特徴

  • 1000Lフレコンでは、流向変換箱とフレコン導入板からなる振り分け器(図1)を用いる。流向変換箱は、破砕機のダクトから放出される破砕物を受け止め、その流向を左右に任意に振り分ける。フレコン導入板は、流向変換箱から吐出される破砕物をフレコンの中心部へ導き、フレコンを変形のない円筒形に仕上げる。
  • 1000Lフレコンでは、(1)空フレコンのスタンドへのセット→(2)フレコン導入板の引き下げ→(3)フレコンへの投入開始→(4)フレコンが満杯になった時点での流向変換箱の切り替え→(5)反対側空フレコンへの投入開始→(6)満杯フレコン側のフレコン導入板の引き上げ→(7)スタンドの除去→(8)フレコンの吊り上げ(パレットフォーク等利用)の作業を繰り返す(図1)。
  • 空の1000Lフレコンが満杯になるまでの時間は、破砕機の作業能率11t/hで約4分である。この間に、上記の一連の作業を完了するには2名が必要となるが、破砕の作業能率が7t/h(満杯時間約7分)以下であれば1名で対応できる。
  • 500Lフレコンでは、破砕機(U500T、タカキタ)の放出ダクトに、その傾きを任意の角度で固定できる振り分け器を用いる(図2)。空の500Lフレコンが満杯となるまでの時間は、破砕速度11t/hで約2分と短いため、台車付きのスタンド(図2)3台にフレコンをセットして、台車(図3)ごと逐次フレコンの出し入れを行い、パレットフォークの動線を短縮するする必要がある。なお、ダクトの振り幅は60cm程度なので1000Lフレコンには対応できない。
  • 500Lフレコン体系における、振り分け器の操作、台車の移動、パレットフォークへの受け渡し補助、空フレコンのセットには3名が必要である。

成果の活用面・留意点

  • コントラクター、畜産農家営農集団、企業的畜産農家での利用を想定した情報である。作業性は現地農家で48t、所内で11tを調製して検証した。
  • 器具を自作した場合の材料費は、1000L対応振り分け器が約50000円、500L対応振り分け器が約3000円、500L用台車が約30000円である。
  • データ収集に使用した破砕機はU500T(タカキタ)である。パレットフォークで吊り下げ作業を行うには、吊り下げ用のアタッチメントを装着する。

具体的データ

図1 1000Lフレコン対応振り分け作業体系;図2 500Lフレコン対応振り分け作業体系;図3 500Lフレコン用の台車付きフレコンスタンド

その他

  • 予算区分:交付金、委託プロ(収益力向上)、その他外部資金(27補正「地域戦略プロ」)
  • 研究期間:2015~2017年度
  • 研究担当者:魚住順、嶝野英子、河本英憲、神園巴美
  • 発表論文等:魚住ら(2018)日本草地学会誌、印刷中