越夏性に優れるペレニアルライグラス新品種「夏ごしペレ」

要約

ペレニアルライグラス「夏ごしペレ」は、越夏性、収量性に優れ、本州以南の寒冷地(東北地域や中部高標高地帯:年平均気温9~12°C)を対象に、主に放牧用として利用できる。

  • キーワード:放牧用、越夏性、ペレニアルライグラス、寒冷地、飼料作物育種
  • 担当:東北農業研究センター・畜産飼料作研究領域・飼料生産グループ
  • 代表連絡先:電話019-643-3433
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

ペレニアルライグラスは、海外で最も利用されている牧草である。これは、飼料品質や嗜好性に優れるため、家畜の増体促進と酪農での泌乳量増加が期待できることや、初期生育に優れるために、追播利用などに適するためである。近年、北海道では、放牧地と採草地の追播用としてペレニアルライグラスの利用が大幅に増加している。一方、本州以南においては、夏季の高温による枯死や生育停滞によって雑草との競合に負け、短期間にペレニアルライグラスの植被率が低下することがあるために、その利用は限定的である。そこで夏季の生産性に優れたペレニアルライグラス品種を育成し、本州以南の寒冷地での放牧の推進と自給飼料の高品質化を図る。

成果の内容・特徴

  • 放牧を想定した多回刈り試験の結果、「夏ごしペレ」の3年間の合計収量は、「ヤツユメ」と比べて、全ての試験場で同等以上で、5場所平均で4%多収である。「フレンド」と比べても全ての試験場で「夏ごしペレ」が優れ、平均で9%多収である(表1)。
  • ペレニアルライグラスの栽培限界地域(栃木県那須塩原市)における「夏ごしペレ」の越夏性は、高越夏性品種である「ヤツユメ」より優れる(図1)。
  • 東北地域などの栽培適地での越夏性は、「ヤツユメ」より優れる(表2)。夏季の病害罹病程度については、「ヤツユメ」と比べて、冠さび病は同等かやや高く、いもち病は同等かやや低い(表2)。
  • 越冬性は、「ヤツユメ」と同程度で、東北積雪地での越冬に問題はない(表2)。
  • 出穂始日は「ヤツユメ」より4日早く、「ポコロ」と同程度で晩生である(表2)。
  • 採草利用(年3回刈り)での乾物収量は、「ヤツユメ」と程度である(表2)。
  • 飼料成分のうち可消化養分総量は、「ヤツユメ」と同程度である(表2)
  • 採種性については、「ヤツユメ」より優れ、実規模における採種性は実用上問題ない水準である(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 放牧利用を主体とする草地で使用する。採草利用する場合は、採草用の牧草と比較して耐倒伏性に劣るので、刈り遅れないようにする。
  • 栽培適地は、本州以南の寒冷地(東北地域や中部高標高地帯:年平均気温9~12°Cの地域)である。いもち病が大発生し、枯死する地域での利用には適さない。
  • 種子の販売は、2020年を予定している

具体的データ

図1 「夏ごしペレ」の越夏後の様子

その他

  • 予算区分:交付金、競争的資金(農食事業)
  • 研究期間:2001~2017年度
  • 研究担当者:藤森雅博、久保田明人、秋山征夫、上山泰史、保倉勝己(山梨畜酪)、田瀬和浩(山梨畜酪)、藤森雅博(山梨畜酪)、藤岡洋子(山梨畜酪)、保倉彩(山梨畜酪)、菊嶋敬子(山梨畜酪)、岸田諭俊(山梨畜酪)
  • 発表論文等:藤森ら「夏ごしペレ」品種登録出願第33135号(2018年5月24日)