社会にインパクトのあった研究成果

農林水産省農林水産技術会議事務局は、農業技術クラブの協力を得て「農林水産研究成果10大ニュース」を選定しています。これは、各年に新聞記事になった研究成果(独立行政法人研究機関、公立試験研究機関、大学及び民間の研究成果)の中から、内容に優れ、社会的関心が高いと考えられるもの10件を選定するものです。2019年は、農研機構が中心及び共同で行った研究成果が5件選ばれました。

農林水産研究成果10大ニュース 2019年選出

楽してお得!配水管理システム
-ICTによる自動化で管理労力と費用を削減-

【写真】 自動給水栓(左)とポンプ場の制御盤(右)

圃場の水管理の省力化に向けた取り組みが進んでいますが、土地改良区が管理するポンプ場等の水利施設は、主に手動で管理されており、管理労力や節水・節電の観点からも水管理の効率化・自動化が求められています。

農研機構は、ICTを活用し、水路から水田に最適に農業用水を供給する配水管理システムを開発しました。必要な水の量に応じてポンプの出力を最適化することにより、管理者の配水作業を省力化できるとともに、電気代などの管理費の削減や節水に貢献することが期待されます。

コウモリの超音波でガの侵入を阻止
-イチゴハウスでの産卵を9割以上も抑制-

【写真】モモノゴマダラノメイガのメス成虫

農作物を加害するガの多くは耳を持ち、捕食者であるコウモリが発する超音波に対して忌避行動をとります。

農研機構、東北学院大学及びJRCS株式会社は、コウモリが発する超音波を嫌うガの性質に着目し、これを模倣した人工の超音波でガを追い払う装置を開発しました。この装置をイチゴハウスの側窓に向けて設置し、ガが活動する日没前から朝方まで超音波を発生させたところ、ハウス内へのガの侵入が大幅に減り、産卵数を9割以上抑制することに成功しました。農薬の使用量を抑えた害虫管理の実現に貢献するものと期待されます。

牛の乳房炎の早期診断で新たな手法を発見
-小型NMRで黄色ブドウ球菌乳房炎をいち早く察知-

【写真】 小皿上に広げた乳の写真。正常な乳(左)。黄色ブドウ球菌性乳房炎乳(右)。

黄色ブドウ球菌による牛の乳房炎は、乳量と乳質が低下し、酪農家の経済的被害が懸念されます。早期発見し、治療することが重要です。

理化学研究所及び農研機構は、乳汁を核磁気共鳴装置(NMR)で計測することによって、乳房炎を早期に診断できる手法を発見しました。乳汁に含まれる微粒子の表面積(比表面積)に着目し、黄色ブドウ球菌に感染した乳房炎乳汁は、この比表面積の数値が減少することを発見しました。その値がリアルタイムに得られることから症状を示す前の乳房炎であっても早期発見が可能となり、被害抑制への貢献が期待されます。

小型で低価格、中規模農家向け豚舎洗浄ロボットが誕生
-つらい洗浄作業を大幅に省力化-

【写真】 開発した肥育豚舎用洗浄ロボット(高機能型)

豚舎の洗浄作業は、排泄物が飛散する極めて厳しい環境下で行われる上に、農場における全労働時間の約1/3を占めることから、離職する従業員が相次ぎ、養豚経営の人材育成に深刻な影響を及ぼしています。

農研機構、株式会社中嶋製作所、香川大学などの研究グループは、中規模養豚農家向けの、日本の狭い豚舎通路に対応可能なコンパクトかつ安価な豚舎洗浄用ロボットを開発しました。過酷な環境下での手作業の豚舎洗浄は、長時間にわたる過酷な作業ですが、開発したロボットがその大部分の作業を担い、人手による洗浄時間を3割以下に縮減することが可能となり、徹底した洗浄・消毒を行うことで疾病リスクの低減も期待されます。

病気に強く、花も大きくする遺伝子をイネから発見!

【写真】BSR2遺伝子を強く働かせたイネ及びシロイヌナズナのイネ紋枯病菌感染への抵抗性

紋枯病は日本の稲作における2大病害の1つで、その対策は施肥などの栽培管理や抗菌剤による防除に頼っていることから、紋枯病抵抗性イネの開発や、新たな防除方法の開発が望まれています。

農研機構、理化学研究所、岡山県農林総合センター生物科学研究所は、イネの重要病害である紋枯病に強くなり、かつ花が大きくなる遺伝子BSR2(ビーエスアールツー)を、イネから発見しました。今後は、BSR2遺伝子によって紋枯病に強くなる仕組みを調べ、イネ紋枯病の新たな防除方法の開発を目指します。また、この遺伝子の利用により、病害に強く大輪の花きの開発等が期待されます。