社会にインパクトのあった研究成果

農林水産研究成果10大トピックス 2016年選出

刈刃の回転を即座に止める機構の開発
-刈払機の刈刃との接触事故低減に期待!!-

刈払機による農作業事故の原因には、キックバックや作業中の転倒による刈刃との接触が多くを占めており、その対策が求められています。

農研機構は、刈払機を用いた作業中に転倒したり、刈刃が障害物や地面に当たった反動で跳ね返ったりした場合に回り続ける刈刃による事故を低減させるため、市販機への後付も考慮した刈刃停止機構を開発しました。刈刃に直接ブレーキパッドを接触させて制動することで、停止まで20秒以上要していた刈刃の回転時間を約3秒に短縮でき、事故低減が期待されます。

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飼料用米に適した水稲新品種「オオナリ」を開発
-10アール1トンの超多収に期待-

飼料用米生産を持続的に行っていくためには、単収を増加させることを通じて、生産コストを大幅に削減していく必要があります。

農研機構は、飼料用米に適した水稲新品種「オオナリ」を開発しました。多収品種「タカナリ」の脱粒性を改善することにより、収穫期の損失が減少し、これまでで最高レベルの収量性を持っています。「オオナリ」の普及により、飼料用米の生産コストの削減が期待されます。

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光で天敵を集め、害虫を減らす技術を開発
-化学農薬が効かないアザミウマの防除に期待-

アザミウマはナス、トマト、イチゴなど多くの農作物に害を与える大害虫で、主に農薬(化学合成殺虫剤)により防除が行われてきました。しかし、近年、殺虫剤がほとんど効かない害虫(アザミウマ、アブラムシなど)が栽培現場に蔓延し、日本の野菜全体で毎年1,000億円を超える経済損失が発生するなど、大きな問題となっています。

農研機構、筑波大学、株式会社シグレイは共同で、特定の波長を作物に照射し、アザミウマの天敵であるハナカメムシを作物上へ誘引・定着させる技術を開発しました。紫色LEDを1日3時間作物に照射することで、天敵が最大10倍まで増加し、害虫を効率的に捕食させ防除することが可能となりました。本技術による農薬散布の削減や薬剤抵抗性害虫の防除への効果が期待されます。

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コウモリを真似た超音波でガの飛来を阻害する技術を開発
-環境に優しい物理的害虫防除が可能-

近年、生物多様性や環境保全の観点から、農業生産の現場では、減農薬栽培や有機栽培への取り組みが進められています。そのため、化学殺虫剤に代わる実用的な害虫防除技術の開発が求められています。

農研機構は、農業害虫である「ガ」が嫌がる超音波のパルスの長さを明らかにしました。ガをよく捕食するコウモリが発する超音波パルスを模した合成音を聞かせることで、ノメイガの農作物への飛来を減らすことができ、本手法により、ガの産卵を高効率に阻害することで化学殺虫剤の散布回数を削減し、環境負荷の少ない害虫防除技術の開発が期待されます。

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トマトの青枯病にアミノ酸が効くことを発見
-新しい青枯病防除剤の開発に期待-

土壌中の病原菌によって起こる土壌病害は、根が常に土壌に触れていること、消毒剤や薬剤の及ばない土壌深層にも病原菌は生存することから防除が困難です。土壌病害である青枯病は、トマトやナス、ピーマン、ジャガイモ、ショウガなど多くの作物に発生する作物の重要病害のひとつです。特にトマト栽培では近年、施設の大規模化や産地ブランドの拡大により連作を余儀なくされ、本病の発生が増加しています。

農研機構は、トマトの重要病害である青枯病の防除にヒスチジンやアルギニン、リシン等のアミノ酸が有効であることを発見しました。ヒスチジン等のアミノ酸に青枯病の原因である青枯病菌を直接殺菌する効果はないものの、植物の病害抵抗性を高め、発病を抑える効果があることを確認しました。作物の病害抵抗力を利用した青枯病防除剤の素材として期待されます。

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日本初のデュラム小麦品種「セトデュール」を育成
-国産セモリナ粉で本格的なパスタを提供-

デュラム小麦は、日本で栽培されている普通小麦に比べて成熟期が遅く、赤かび病に弱く、白粒で穂発芽耐性が弱いため、収穫時期が梅雨に当たる国内ではほとんど栽培されておらず、これまで本格的な品種育成は行われてきませんでした。しかし、実需者や消費者からは、国産のデュラム小麦を使用した商品が要望されています。

農研機構は、日本初のデュラム小麦品種「セトデュール」を育成しました。黄色みのあるセモリナ粉が取れ、スパゲッティはデュラム小麦特有の食感を示します。100%国産のデュラムセモリナを使用したパスタ製品の提供が可能となり、小麦栽培の拡大や地産地消、6次産業化への貢献が期待されます。

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ベータ-クリプトキサンチンで生活習慣病の発症リスクの低下を実証
-ウンシュウミカンの消費拡大に期待-

欧米を中心とする最近の栄養疫学研究から、果物・野菜の摂取が、がんや循環器系疾患の予防に重要であることが明らかにされつつあります。

農研機構は、浜松医科大学、浜松市と合同で、ベータ-クリプトキサンチンを多く含むウンシュウミカンの摂取により、生活習慣病の発症リスクが低下することを明らかにしました。既に表示が認められている骨の健康に役立つ機能に加え、新たな機能性表示に繋がり、ウンシュウミカンの更なる消費拡大が期待されます。

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自家受粉が可能なニホンナシ新品種「なるみ」を育成
-人工受粉の省力化が可能-

ニホンナシの主要品種は、自家不和合性という性質を持っていることから、結実を確保するためには労力のかかる人工受粉作業が必須です。

農研機構は、自分の花粉で受精し人工受粉が不要なニホンナシ新品種「なるみ」を育成しました。一般にナシは自分と同じ品種の花粉では実ができませんが、「なるみ」は自分の花粉でも結実可能です。全国のニホンナシ産地で栽培可能であり、花粉調製が不要で人工受粉の省力化が可能な品種として普及が期待されます。

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