様々な営農形態に柔軟に対応できるGIS機能を備えた営農情報管理システム「FARMS」

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要約

開発した営農情報管理システムは、個別の経営体からJA単位での地域的管理まで幅広く対応可能で、ほ場毎の基本情報と作付け・作業状況を随時管理する機能、合筆や分筆、二毛作等の作付けの変化に柔軟に対応できるGIS機能を備えている。

  • キーワード:作業履歴、情報、収量コンバイン、GIS、ソフトウェア
  • 担当:生研センター・生産システム研究部・大規模機械化システム研究
  • 代表連絡先:電話048-654-7000
  • 区分:共通基盤・作業技術、情報研究
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

大規模営農組織等においては、効率的な作業体系で生産コストの低減を図り、消費者が要望する安心・安全な農産物を生産することが求められているが、農地や農作業の集積が進んだ現状では、栽培管理全体を把握することが困難になりつつある。また、トレーサビリティへの対応や収量コンバイン(2003年度主要研究成果)から得られる情報を活用するために、詳細な営農情報を確実に扱うことが求められている。そこで、低コストで高品質な農産物の生産に寄与することを目的に、ほ場を視覚的に把握するためのGIS機能を備え、経営体の規模やほ場の利用形態の変化に柔軟に対応できる営農情報管理システムを開発する。

成果の内容・特徴

  • 本システムは、利用者が直接操作し情報の入力や表示等を行う主プログラム、数値や文字情報を蓄積するデータベースプログラム、画像等、容量の大きいデータを蓄積するWEBサービスプログラムから構成される。これらは、サーバを導入してネットワークを介して利用する方式、パソコン1台で利用する方式を選択でき、前者の場合は複数の利用者が情報の取得や登録を同時に行うことができる(図1)。
  • 営農情報は1つの経営体に相当する単位(ファーム)で管理され、全てのファーム情報にアクセスできる広域管理者を登録することにより、JA等による複数ファーム情報の一元的な管理形態にも対応することができる(図1)。
  • パソコン上で利用される一般的形式の画像ファイルを背景図として取り込むことができる。また、いわゆる「お絵かきソフト」と同様の要領で背景図をトレースすることにより、GIS情報を持つほ場図の作成とデータベースへの登録を行うことができる(図2)。
  • 本システムで利用するほ場の情報は、台帳に相当する「基本ほ場」と、作期に対応して更新される「作付けほ場」に分かれており、合筆、分筆、二毛作等にも柔軟に対応し(図2)、次の作期への更新、前後の作付け状況の確認を容易に行うことができる。
  • 作付け作物や品種、作業履歴等の登録は、複数のほ場に対して一括で行うこともできる(図3)。また、登録されたほ場の情報(ほ場番号、面積、品種等)を収量コンバインへ送信して登録することができ、収穫後には収穫情報を取得し、作業履歴として迅速に登録できる。
  • 登録された各種の情報は即座にほ場図へ反映され視覚的に確認できるとともに、CSV形式のファイルや印刷機能によって出力を行えるため、トレーサビリティの確保にも活用できる。

成果の活用面・留意点

  • 本システムは、市販が開始された収量コンバインとともに配布し利用されている。また、生産組合や法人等、複数の経営体に導入し改良を加えつつ実証的に継続利用されている。
  • 本システムに関する情報交換等を行うために、農業者、JA、研究者等で構成するFARMS研究会を発足した。この研究会での検討を経て、今後本格的な普及に移行する予定である。
  • 本システムを導入するにはWindows XP以降のOSが導入されたパソコンが必要である。ほ場図を利用した操作を円滑に行うため、SXGA(1240×1024)程度以上のモニタの利用を推奨する。

具体的データ

図1 システムの構成例

図2 ほ場図の作成と編集の例

図3 主プログラム上のほ場図表示と作業入力(一括)の例

その他

  • 研究課題名:IT、ロボット技術等を活用した革新的な農業機械・装置等の開発
  • 課題ID:800-e
  • 予算区分:経常、所内特研
  • 研究期間:2002~2007年度
  • 研究担当者:林和信、西村洋、堀尾光広、紺屋秀之、日高靖之、栗原英治、宮原佳彦、牧野英二、臼井善彦、
                       杉山隆夫
  • 発表論文等:林ら(2008)職務作成プログラム登録、機構S-07