輸出用果実のハダニ類成虫を除去する連続搬送式果実洗浄機

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

輸出用果実の上下2ヶ所のくぼみに水滴を含んだ圧縮空気の旋回流を同時噴射してハダニ類成虫を果実から除去する連続搬送式果実洗浄機である。バッチ式の揺動噴射式果実洗浄機や慣行作業と同等にハダニ類成虫の除去ができ、高い処理能力を示す。

  • キーワード:輸出用果実、ハダニ、果実洗浄機、圧縮空気、旋回流
  • 担当:生研センター・園芸工学研究部・野菜収穫工学研究
  • 代表連絡先:電話048-654-7000
  • 区分:共通基盤・作業技術、果樹・栽培
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

近年、わが国のリンゴやナシのアジア諸国への輸出が活発であるが、果実にハダニ類の付着が目立つ場合には検疫で不合格になることがあり、また、ハダニの付着は商品価値を著しく損なう。そのため、輸出用果実は一個ずつエアガンを用いた手作業で処理されており、多くの時間を要していた。輸出用果実に付着するハダニ類成虫の除去作業の省力化を目的に揺動噴射式果実洗浄機(平成18年度主要研究成果情報)を開発したが、バッチ式のため処理能力は低い。そこで、処理能力の向上と作業の省力化を目的とし、果実を連続搬送する果実洗浄機を開発し、その効果を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • ターンテーブルの搬送トレイに果実を供給し、洗浄後に取り出す連続搬送式の果実洗浄機である。果実の上下2ヶ所のくぼみに水滴を含んだ空気圧0.8MPa程度の圧縮空気を噴射してハダニ類成虫を除去する。噴射時に回転するフレキシブルノズルであり、噴射空気は中空の環状軌跡を持つ旋回流である。光電センサを用いて果実高さを検出し、上方のノズル位置を4段階(高さ85、95、105、115mm)に自動調整する。搬送速度は、果実へのハダニ類の付着状態や作業人数に合わせて0.02~0.16m/s(0.1~0.9果/s)の範囲で手動調整できる(図1表1)。
  • 連続搬送式果実洗浄機によりリンゴ果実表面に付着した休眠態ナミハダニ雌成虫を完全に除去した除去果数割合は、揺動噴射式果実洗浄機やエアガンを用いた慣行作業と同等の90%以上と高い。また、コナカイガラムシが付着したナシ果実に対する除去果数割合は、揺動噴射式や慣行作業と同等の100%と高い(表2)。
  • 供給から取り出しまでを1人作業で行う単位時間当たりの処理果数は、慣行作業の2.7倍である(図2)。また、揺動噴射式と比較して、1人作業では1.6倍、果実の供給と取り出しを別々の作業者が行う2人組作業で3.7倍と多く、高い処理能力を示す。

成果の活用面・留意点

  • リンゴのがく窪内に生息しているハダニ類成虫は除去できない。また、ハダニの越冬卵については洗浄時間を3秒程度長くする必要がある。
  • 除去精度を高めるために、果実のくぼみがノズルへ正対するように搬送トレイへ供給する。

具体的データ

図1 連続搬送式果実洗浄機

図2 単位時間当たりの処理果数

その他

  • 研究課題名:消費者ニーズに対応した農畜産物の供給に寄与する農業機械・装置等の開発
  • 課題ID:800b
  • 予算区分:経常、科研費
  • 研究期間:2008~2009年度
  • 研究担当者:宮崎昌宏、青木循、金光幹雄、齋藤秀文、中村ゆり
  • 発表論文等:発表論文等:宮崎ら「果実に付着した微小害虫除去装置」特開2007-228907