機上選別・調製で大型コンテナ収容を行う高能率キャベツ収穫機

要約

刈り取ったキャベツを機上で作業者が選別・調製して大型コンテナへ収容することのできるキャベツ収穫機である。主に加工・業務用のキャベツを精度良く、2.9a/hの能率で収穫することができ、手作業に比べて10a当たりの投下労働時間を40%以上削減できる。

  • キーワード:キャベツ、加工・業務用、収穫、高能率、大型コンテナ
  • 担当:農業機械化促進・省力化農業機械
  • 代表連絡先:電話 048-654-7000
  • 研究所名:生物系特定産業技術研究支援センター・園芸工学研究部
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

近年、キャベツの加工・業務用途の出荷は49%で増加傾向にあり、キャベツ作の新規導入や規模拡大を進める産地が増加している。加工・業務用キャベツは生食用よりも20%取引価格が安いため、生産コストの低減が必要である。キャベツの生産には10a当たり87時間を要しており、特に収穫作業はその3割を占めているため機械化による省力・低コスト化が求められている。そこで、刈り取ったキャベツを機上で作業者が選別・調製して大型コンテナへ収容する方式を採用した高能率キャベツ収穫機を新たに開発する。

成果の内容・特徴

  • 開発したキャベツ収穫機は、主に刈取部、調製作業部、履帯式(ゴムクローラ)の走行部で構成される乗用型の機械である。刈取条数は1条で、1畝1条栽培の畝幅60cm以上、畝高さ20cm以下の栽培条件に対応する。収穫時の作業速度は概ね0.15~0.20m/sである(図1、表)。
  • 刈取部は、キャベツの茎部を掻き込みディスクで掴みながらキャベツを引き抜き、挟持ベルトで搬送し、結球部の姿勢を補正しながら茎部を切断する。キャベツの形状や大きさに合わせて作業中でも切断位置を手動調整できるため、切断精度を高くできる。切断されたキャベツは、機上の調製作業部に搬送される。
  • 調製作業部には、調製作業用ベルトコンベアと、作業スペースがあり、キャベツを収容する大型の収容コンテナを1基積載できる。調製作業は、作業者がコンベアを流れるキャベツを選別し、不要な外葉をはがしてからコンテナに収める。切り直しが必要なキャベツや、処理が追いつかず保留するキャベツはコンベア奥側の処理保留棚に貯めておくことができる。外葉や損傷のあるキャベツはコンベアから圃場に廃棄される。
  • 収穫作業は、収穫機のオペレータ1名、機上作業者2~4名、コンテナを扱うローダ等のオペレータ1名の合計4~6名で行う。キャベツを収容するコンテナは、容量1m3、幅1.2m×奥行1.0m×高さ0.75mのメッシュボックスパレット(折りたたみ式)が適する(図2)。
  • 切断精度(茎部切断における無傷球割合)は、結球部に残る外葉枚数を3枚残す刈取り設定に切断位置を調整した場合、90%以上となる。外葉を4~5枚残す刈取り設定にした場合、切断精度はさらに向上する(図3)。
  • トラックによるほ場外運搬作業を含めた作業能率は、5名作業、作業速度0.19m/sの条件において、毎時2.9aである。投下労働時間は、17.4人・時/10aとなり、慣行手作業よりも40%以上低減できる(図3)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:大規模キャベツ生産者・生産組織、JAなど。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:北海道、南九州等の大規模キャベツ産地・200ha・20台。
  • その他:具体的データは小型機のもので、この他に大型機(機体寸法:5,450×2,320×2,510mm、機体質量:2,530kg、原動機:30.2kW(ディーゼル))がある。2013年度春期に市販化予定。大型コンテナ集出荷に対応する本機は、北海道や南九州の産地が進めるモーダルシフトの取り組みを加速する。再調製作業を前提に、外葉を多めにつけた状態で収穫すれば、生食用キャベツでも利用できる。最大年間100日程度の稼働が見込める。寒玉系品種の「おきな」が機械収穫に適する。

具体的データ

 図1~3,表

その他

  • 中課題名:農作業の更なる省力化に資する農業機械・装置の開発
  • 中課題番号:600a0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2012年度
  • 研究担当者:青木 循、深山大介、李 昇圭、宮崎昌宏、丸山高史(ヤンマー(株))、楢原陽三郎(ヤンマー(株))、長田秀治(オサダ農機(株))