3輪式乗用管理機にミッドマウント式で搭載する高能率水田用除草装置

要約

3輪式乗用管理機の車体中央部に搭載する(ミッドマウント式)高能率水田用除草装置。条間は駆動爪付きロータ式、株間は揺動レーキ式で除草を行う。最速1.2m/s で除草作業を行うことが可能であり、2回の除草で除草効果80%以上で、欠株率が低い。

  • キーワード:水田、雑草、除草、有機農業
  • 担当:農業機械化促進・環境負荷低減技術
  • 代表連絡先:電話 048-654-7000
  • 研究所名:生物系特定産業技術研究支援センター・生産システム研究部
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

消費者の安全・安心志向の高まりと環境負荷低減の観点から、各地で水稲の減農薬・無農薬栽培が推進されている。しかし、現況は水田内で発生する雑草の防除が重要な課題であり、除草作業にかかる労力が大きな負担となっている。生産現場では、水稲の減農薬・無農薬栽培における除草方法として、機械除草が必要不可欠と考えられおり、高能率な乗用型の水田用除草装置の開発が求められている。そこで、既存の管理用車両等に装着して使用することが可能で、作業速度が速く、除草効果が高く、欠株の少ない水田用除草装置を開発する。

成果の内容・特徴

  • 本装置は、4条用と6条用があり3輪式乗用管理機にミッドマウント式で搭載する(図1)。これによりオペレータが除草部を常に視認できるため、稲株や圃場状況を確認しながらの除草作業を行うことが可能となる。また、車体後部装着方式に比べて操舵に伴う除草部と稲の条とのずれが少なくなり、高精度な作業が行える。本装置は昇降可能であり、駆動爪付きロータの深さ6段階(1cm×6段)、揺動レーキの高さ3段階(1cm×3段)に調整できる。株間の揺動レーキは、雑草の発生状況に応じて揺動速度を高・低の2段階に変速可能である。また、水田面をフロートで感知して作業高さを自動調整する。
  • 除草機構は、水稲の条間は駆動爪付きロータ式で回転することにより条間の除草を行い、株間は揺動レーキ式を採用してレーキが左右に揺動することにより株間の除草を行う(図2)。本装置は、管理用車両からのPTOまたは本装置に搭載したエンジンにより駆動される。
  • 除草作業時期は地域や圃場条件により異なるが、稲の活着後に速やかに除草作業を行った場合、1作あたり2回の除草作業で除草率は80%以上となり除草効果が高い(図3)。
  • ミッドマウント式のため除草部と稲の条とのずれが少なく、条間ロータと稲株の接触が減少し、欠株率は3%以下である(図4)。
  • 最高作業速度は、歩行用除草機(約0.3m/s)の約4倍となる1.2m/s である。作業能率は圃場条件により異なるが、4条用が約30a/h、6条用は約45a/h である。

普及のための参考情報

  • 普及対象:減農薬・無農薬水稲栽培生産者
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:日本各地の有機水稲栽培地域に240ha(2ha×120台)・普及台数120台/年(予定)
  • その他:来年度(2015年)より市販化予定。本装置は、導入地域の条件に合わせて除草時期や作業速度などの適正条件を見定め、利用する必要がある。

具体的データ

図1~4

その他

  • 中課題名:環境負荷の低減及び農業生産資材の効率利用に資する農業機械の開発及び評価試験の高度化
  • 中課題整理番号:600b0
  • 予算区分:交付金、緊プロ
  • 研究期間:2012~2014年度
  • 研究担当者:吉田隆延、水上智道、田中庸之、三浦重典、内野章、陶山純(みのる産業)、川口良太郎(みのる産業)、小林慈郎(みのる産業)、安達康弘(島根農技セ)、中井譲(滋賀農技セ)、臼井智彦(岩手農研セ)、酒井究(福井農試)、奥村華子(福井農試)、庄司浩一(神戸大)
  • 発表論文等:
    1)水上ら 特願2013-270581(2013 年12月26日)
    2)吉田ら 特願2014-4801(2014 年1月16日)
    3)吉田ら 特願2014-187429(2014年9月16日)
    4)吉田ら 特願2014-187430(2014年9月16日)