エチレン非依存性花きの老化を制御する新規遺伝子

要約

エチレン非依存性花きであるアサガオから単離したInPSR26遺伝子は、花弁の老化を制御する新規遺伝子である。

  • キーワード:プログラム細胞死、エチレン非依存性花き、アサガオ、オートファジー
  • 担当:花き研・花き品質解析研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-6801
  • 区分:花き
  • 分類:研究・普及

背景・ねらい

花弁の老化に内生エチレンが関与しない花き(エチレン非依存性花き)には、バラやユリなど多くの重要な花きが含まれるが、有効な品質保持技術は開発されていない。一般に、花の老化はプログラム細胞死(PCD)により制御されていることが知られている。そこで本研究では、エチレン非依存性花きの老化を制御する技術の開発を目的とし、花弁老化時のPCDに主導的な役割を果たしている新規遺伝子の特定を行う。

成果の内容・特徴

  • InPSR26遺伝子は、アサガオ花弁の老化時に発現量が増加する遺伝子として単離された、機能未知の膜タンパク質をコードすると推定される遺伝子である。
  • InPSR26遺伝子の発現を抑制した形質転換アサガオ(PSR26r系統)では、花弁の可視的な老化が著しく促進される(図1)。
  • PSR26r系統の花弁では、水ポテンシャルの減少、および、電解質とアントシアニンの漏出が促進される(データ略)。また、開花4時間と8時間後の花弁では野生型に比べDNAの断片化が進行している(図2)。これらの結果は、PSR26r系統では、花弁老化時のPCDの進行が促進されていることを示している。
  • PSR26r系統の花弁では、細胞が自己の細胞質構成成分を分解する作用であるオートファジーに関与する遺伝子の発現が抑制されている(データ略)。
  • PSR26r系統の花弁では、オートファジー活性(オートファジーが誘導されている細胞の割合)が有意に低下している(図3)。
  • 開花前のアサガオの花に、オートファジー阻害剤である3-メチルアデニンを処理すると、花弁の老化が促進される(データ略)。これらの結果は、オートファジーには花弁の老化を遅らせるはたらきがあることを示唆している。
  • 以上の結果は、InPSR26遺伝子が、花弁老化時のPCDの進行を制御していることを示している。また、その作用はオートファジーの制御を介して発現していると考えられる。
  • 本成果は、花弁老化を制御する新規遺伝子の発見を報告するものである。

成果の活用面・留意点

  • InPSR26遺伝子を過剰に発現させることなどにより、花弁の老化を抑制することに利用できる可能性がある。

具体的データ

図1 InPSR26遺伝子の発現を抑制した形質転換アサガオの花弁老化の様子上段,野生型;下段,形質転換体(PSR26r-1)

図2 開花後の花弁におけるDNA断片化の様子

図3 開花8時間後の花弁におけるオートファジー活性 **有意差(1%水準)、n=3(300プロトプラスト/カウント)

その他

  • 研究課題名:花きの品質発現機構の解明とバケット流通システムに対応した品質保持技術の開発
  • 課題ID:313-b
  • 予算区分:交付金プロ(実用遺伝子)
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:渋谷健市、山田哲也(東京農工大)、鈴木智子(東京農工大)、清水圭一(鹿児島大)、市村一雄
  • 発表論文等:1)Shibuya K. et al. (2009) Plant Physiol. 149:816-824.
                       2)Yamada T. et al. (2007) Plant Cell Rep. 26:823-835.
                       3)Yamada T. et al. (2009) Plant Cell Physiol. 50:610-625