ハボタンの臭気成分とその発生要因

要約

ハボタンの切り花から生じる臭気の原因物質は二硫化ジメチルであり、その主要な発生源は生け水である。生け水を24時間ごとに交換する、あるいはイソチアゾリン系抗菌剤の添加によって、本臭気成分の生け水からの発散量を80%以上抑制することができる。

  • キーワード:ハボタン、切り花、臭気、二硫化ジメチル、イソチアゾリン系抗菌剤
  • 担当:加工流通プロセス・品質評価保持向上
  • 代表連絡先:電話 029-838-6801
  • 研究所名:花き研究所・花き研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

欧州では夏季にハボタンの切り花から異臭が生じることがあり、問題となっている。日本ではハボタンは冬季に主に鉢花として用いられており、異臭の問題の報告はない。しかし近年、日本においても切り花としての需要や流通期間がのびており、同様の問題が生じる可能性がある。そこで、欧州と日本に共通して主要な切り花用品種である「初紅」と「晴姿」から発生する臭気成分とその発生機構を明らかにし,臭気成分の発生を化学的処理によって抑制する。

成果の内容・特徴

  • 夏季の高温を想定した28°C下で維持した「初紅」と「晴姿」の切り花において、発散量が多く、臭気閾値が低い二硫化ジメチルが臭気の原因物質である(表1)。
  • 二硫化ジメチルの主要な発生源は生け水であり、その発散量は1リットルの蒸留水の入った花瓶に挿して1日後と3日後の間で8~17倍増加する(図1)。
  • 二硫化ジメチルの発散量は、生け水中の茎の腐敗の進行に伴って増加し、微生物の増殖と茎の腐敗を抑制するイソチアゾリン系抗菌剤処理によって減少することから、微生物による植物由来の硫黄化合物の代謝の活性化が、二硫化ジメチル増加の主要な原因のひとつと考えられる。
  • 生け水を24時間ごとに交換するか、イソチアゾリン系抗菌剤(抗菌成分として0.58 mg/Lの5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンと0.18 mg/Lの2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンを含有)を500μL/Lの濃度で添加することによって、二硫化ジメチルの発散量を80%以上抑制することが可能である(図1)。
  • 上述した濃度のイソチアゾリン系抗菌剤処理は、「初紅」と「晴姿」の花姿・花色の品質、および日持ち性を低下させない。

成果の活用面・留意点

  • イソチアゾリン系抗菌剤の生け水への処理は、「初紅」と「晴姿」切り花からの臭気の発生を抑える効果と、花瓶の水替えの労力の軽減が可能である。
  • 「初紅」と「晴姿」では、上述より高濃度のイソチアゾリン系抗菌剤を処理しても二硫化ジメチルの抑制効果は向上しない。「初紅」では上述の2倍濃度のイソチアゾリン系抗菌剤処理により葉がしおれる場合がある。

具体的データ

図1,表1

その他

  • 中課題名:農畜産物の品質評価・保持・向上技術の開発
  • 中課題整理番号:330a0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2011~2014年度
  • 研究担当者:岸本久太郎、大久保直美、前田裕行(タキイ種苗)、羽毛田智明(タキイ種苗)
  • 発表論文等:Kishimoto K. et al. (2014) J. Japan. Soc. Hort. Sci. 83(3):252-258