カンキツ「不知火」の幼果に発生する果頂部の炭疸病菌による褐変・腐敗

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要約

生理落果以降の「不知火」幼果に発生する果頂部の褐変・腐敗さらに落果する症状の原因は炭疸病菌 Colletotrichum gloeosporioides の寄生によることが明らかとなった。

背景・ねらい

カンキツ「不知火」の主産地である熊本県において、生理落果あるいは摘果期以降に、幼果の果頂部が褐変・腐敗さらに落果する障害が大発生し、大きな問題になった。そこで、本症状の原因を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 本症状は露地栽培において、生理落果あるいは摘果後の果実が約4~6cmに肥大した頃から発生する。はじめ、果頂部が黄化し、しだいに褐変・腐敗し、果実全体が黄化した後落果する。
  • 褐変した果頂部には鮭肉色の分生子塊を形成する場合が多い。
  • 分離菌株は不知火の幼果及び葉に病原性を示した。また、両親である清見とポンカンの葉にも病原性を示した(表1,表2)。
  • 分離菌株の形態,分生子は無色透明,先端が丸い円筒形で,油胞を複数個有し、13.0-18.0×4-5μm(平均15.9×4.6μm)の大きさであった。付着器の形状は、頂生、黄褐色、卵形もしくは裂片形で、大きさ6.2-12.8×5.3-6.8μm(平均9.0×6.2μm)であった(表3)。
  • 分離菌株の生育適温は25~30°Cであった。
  • 分離菌株の分生子及び付着器の形態や生育温度は既報の Colletotrichum gloeosporioides とほぼ一致しており、本病原菌を Colletotrichum gloeosporioides と同定した。

成果の活用面・留意点

本症状には新たな病名はつけず、C.gloeosporioides が不知火の幼果に引き起こす一つの症状としての記載にとどめる。

具体的データ

表1.カンキツの切り取り葉に対する分離菌株の病原性 表2.カンキツの幼果に対する分離菌株の病原性

表3.分離菌株とC.gloeosporioidesの分生子及び付着器の形態の比較

その他

  • 研究課題名:不知火の幼果期における果頂腐敗の原因の解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成9年度(平成7~9年)
  • 研究担当者:塩谷 浩、尾崎克巳
  • 発表論文等:Colletotrichum gloeosporioides によるカンキツ品種「不知火」の幼果果頂 腐敗症の発生、九病虫研会報、42巻、1996。