最少マーカーセット選択プログラムMinimalMarker

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要約

開発したプログラムは、多数の品種について多数のDNAマーカーを適用して得られた多型データから、最も少ないマーカー数で、すべての品種を判別するためのマーカーセットを検出するコンピュータプログラムである。

  • キーワード:DNAマーカー、品種判別、多型、プログラム、最少マーカーセット
  • 担当:果樹研・カンキツ研究部・遺伝解析研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・育種、共通基盤・情報研究
  • 分類:科学・普及

背景・ねらい

さまざまな作物でDNAマーカーが開発され、品種判別で利用されている。カンキツにおいても200を超えるDNAマーカーが開発さ れ、品種判別への適用が進められている。品種を判別する際に、与えられた品種群を最少数のマーカーで判別できれば、時間やコストを節約できる。しかし、 マーカー数や品種数が増えると、最適なマーカーセットを手計算で選択することは困難である。そこで、多数の品種に多数のDNAマーカーを適用して得られた 多型データから、最も少ないマーカー数で、すべての品種を判別するマーカーセットをもれなく検出するコンピュータプログラムを開発する。

成果の内容・特徴

  • 最少マーカーセットとは、複数の品種に対して複数のDNAマーカーを適用した多型データ(表1)におけるすべての2品種の組合せを少なくとも1つのマーカーで判別可能なDNAマーカーの組合せのことをいう。DNAマーカーを用いた電気泳動パターンから多型データを読み取る例を示す(図1)。また,最少マーカーセットにより,すべての品種が判別可能であることを樹形図で示す(図2)。
  • 最少マーカーセットを求めるためのプログラム「MinimalMarker」を開発した。 本プログラムはPerlで開発されている。
  • 計算のもととなる多型データは、共優性、優性のいずれでもよく、両者が混在していてもよい。また、倍数性や対立遺伝子の数も問わないので汎用性が高い(表1)。
  • 本プログラムには以下の計算オプションが付加されている。これらを組み合わせて異なる条件で計算を繰り返すことにより、単純な最少マーカーセットの選択だけでなく、マーカーの特性や品種判別実験の条件に適合する最適なマーカーセットを選択できる。
    (1)少なくとも2つのマーカーで判別可能な最少マーカーセットを選択
    (2)特定のマーカーが必ず含まれる最少マーカーセットを選択
    (3)特定のマーカーを除外した最少マーカーセットを選択
    (4)指定したマーカー数ですべての品種を判別可能なマーカーセットを選択
    (5)特定の品種のみを判別する最少マーカーセットを選択
  • 31品種×53マーカーの多型データをWindows XP環境(インテル®Pentium®M 1.1 GHz、760 MB RAM)およびActivePerl 5.8.7を用いて計算した場合、マーカー数5の最少マーカーセットの全16セットを検出するのに要する時間は約7秒である。70品種×70マーカーの計 算時間は約2日で,すべてのマーカーセットの検出を保障しない簡易高速計算モードでは100品種×100マーカーでも数十分で計算を完了する。

成果の活用面・留意点

  • 本プログラムの利用により、全ての最少マーカーセットを短時間で選択できる。最少マーカーセットの利用により品種判別作業が効率化され,時間やコストが節約できる。
  • 果樹研究所のホームページから誰でも利用できるようにする。

具体的データ

図1  2倍体の共優性DNAマーカーを8種類の品種に適用後,電気泳動によって現れたバンドパターンから遺伝子型(多型データ)を判定できることを示した例

 

表1 MinimalMarkerで計算可能な多型データの例

 

図2 表1のデータに
MinimalMarkerを適用して得た最少マーカーセットM01, M02, M05により,すべての品種が判別可能であることを示す樹形図

 

その他

  • 研究課題名:カンキツのBACデータ及びマイクロアレイデータの情報管理システムの構築
  • 課題ID:09-02-07-*-28-05
  • 予算区分:所内特研(戦略推進枠)
  • 研究期間:2005年度
  • 研究担当者:藤井浩、緒方達志、池谷裕幸、島田武彦、遠藤朋子、清水徳朗、大村三男(静岡大学)
  • 発表論文等:藤井浩、緒方達志、大村三男 2005 最少マーカーセット選択プログラム