黄肉で食味の優れたモモ新品種「つきあかり」(モモ筑波121号)

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

モモ新品種候補「モモ筑波121号」は、「まさひめ」×「あかつき」の交雑実生から選抜された系統である。「黄金桃」より2週間あまり早く収穫される中生の黄肉系統で、果皮は黄色、果肉は溶質で糖度が高く、酸味が少なく、食味は良好である。

  • キーワード:モモ、新品種、黄肉、溶質、生食用
  • 担当:果樹研・ナシ・クリ・核果類研究チーム
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・育種
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

モモの果肉色には白色と黄色があるが、わが国の生食用品種の多くは白肉であり、黄肉は缶詰用の印象が強く、生食に用いられること は少ない。しかし近年、消費者の品種多様化の要望が高まり、黄肉品種の栽培が増加し、「黄金桃」のように晩生品種の果実が市場にも流通するようになってい る。そこで、成熟期が異なる黄肉品種のシリーズ化を図るため、食味・品質の優れた中生の黄肉新品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 1991年(平成3年)春に、農林水産省果樹試験場(現 農研機構果樹研究所)千代田圃場において「まさひめ」に「あかつ き」を交雑し、得られた種子を同年秋に播種した。苗圃で2年間養成した後、1994年(平成6年)2月に個体番号「248-6」を付して千代田圃場の育種 圃に定植した。2001年(平成13年)より、「モモ筑波121号」の系統番号を付してモモ第8回系統適応性検定試験に供試し、平成19年度果樹系統適応 性・特性検定試験成績検討会(落葉果樹)において新品種にふさわしいとの結論が得られた。
  • 樹勢はやや強く、樹姿は開張と直立の中間である。枝の発生は多く、花芽の着生も良好である。花は単弁普通咲きで花粉を有し、 結実は良好である。開花期は育成地で4月上旬であり、「あかつき」とほぼ同時期かやや遅く、「黄金桃」より2日早い。果実の収穫期は育成地で7月下旬から 8月上旬であり、「黄金桃」より2週間あまり早く「あかつき」より1週間遅い(表1)。
  • 果形は扁円形で、果実重は220g余り、果皮の地色は黄色で着色は少ない。果肉は黄色で溶質、肉質は「やや密」である。糖度 は平均で14%程度であり、「あかつき」より約1%高く、「黄金桃」よりわずかに低い。酸味は「黄金桃」に較べて少なく、食味は安定して優れている。核は 粘核である。黄肉モモ特有の香りがあり、品質は良好である(表1、図1、図2)。

成果の活用面・留意点

  • 既存のモモ栽培地域で栽培が可能である。高品質品種として黄肉モモの拡大に有効である。
  • 花芽が多く、結実も良好なので、摘蕾・摘果を適切に行い、果実肥大を促進する。果面の微細な亀裂が発生することがあるが、程度は軽く大きな問題とはならない。また、果肉のミツ症の発生も認められるため、適期収穫に努める。
  • せん孔細菌病、灰星病には罹病性であるが、通常の薬剤散布により被害を回避することができる。

具体的データ

表1 「モモ筑波121号」の樹性及び果実形質(農研機構果樹研究所、2007年)

 

図1 「モモ筑波121号」の結実状況(無袋) 図2 「モモ筑波121号」の果実(無袋)

 

その他

  • 研究課題名:高収益な果実生産を可能とする高品質品種の育成と省力・安定生産技術の開発
  • 課題ID:213-e
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1991~2007年度
  • 研究担当者:山口正己、土師 岳、八重垣英明、末貞佑子、三宅正則、西村幸一、京谷英壽、鈴木勝征、木原武士、内田 誠、福田博之、小園照雄