果樹カメムシ類の新しいモニタリング用乾式トラップ

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要約

果樹の最重要害虫であるカメムシ類をモニタリングするために開発した乾式トラップは、水盤式トラップと比較して平均捕獲数はやや少ないもののほぼ同等の感度で発生動向を検出できる。さらに水の補充などの維持管理を必要とせず簡便で省力的である。

  • キーワード:果樹カメムシ類、モニタリング、トラップ、フェロモン
  • 担当:果樹研・果樹害虫研究チーム
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・病害虫
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

果樹の最重要害虫である果樹カメムシ類は山林等で繁殖し移動の過程で果樹園にも侵入する飛来性害虫であり、効果的に防除するため には飛来時期や飛来量を予測するモニタリングが極めて重要である。従来、誘殺灯や水盤式トラップがモニタリングに用いられてきたが、電源設備を必要とした り頻繁な水の補充や交換を要するという制限要因があり、広域にあるいは多数を設置することが困難であった。そこで、果樹カメムシ類の主要な繁殖地である山 林等においても使用できる簡便で省力的な乾式トラップを開発する。

成果の内容・特徴

  • 乾式トラップはスカート部・導入部・捕虫部の3部分から成り(図1)、 金型成型されたパーツにより容易に組み立てられる。スカート部と導入部のジョイント部には空隙があり、スカート部の外側から導入部の内側へと連絡してい る。通路中央部には長さ約25cmの棒を吊るす。また、誘引源としてチャバネアオカメムシの集合フェロモン(信越化学工業(株)製)を用い、棒の先端ある いはスカート部の切抜き部にそのルアーを固定する。飛来したカメムシはスカート部の外側あるいは内側に取り付いた後、上部に歩行移動し、導入部の内側へと 誘導されて煙突部分を上昇し、捕虫部に至って箱内に落下する。
  • トラップ当たり平均捕獲数は水盤式トラップに比べてやや劣るが、有意差は認められない(図2)。
  • 捕獲消長は乾式トラップと水盤式トラップでよく類似しており、ほぼ同等の感度でカメムシの発生動向を検出する(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 水盤式トラップと同様に吊り下げ式であり、支柱等を必要とする。
  • 誘引源のチャバネアオカメムシ集合フェロモンは約1月ごとに交換する。
  • チャバネアオカメムシのほか、ツヤアオカメムシ、クサギカメムシも捕獲される。
  • 山林等を含む広域に多数設置することにより、カメムシの移動行動を面的に把握する新たなモニタリングシステムの構築が可能になる。

具体的データ

図1 乾式トラップの形状 図2 チャバネアオカメムシ成虫の平均捕獲数(2007)

 

図3 チャバネアオカメムシ成虫の捕獲消長(2007)

 

その他

  • 研究課題名:天敵等を用いた果樹害虫の制御・管理技術の開発
  • 課題ID:214-n
  • 予算区分:高度化事業(果樹カメムシ)・政府受託(生物機能)
  • 研究期間:2004~2007年度
  • 研究担当者:足立礎、内野憲(千葉農総研セ)、望月文昭(信越化学工業(株))
  • 発表論文等:
    1)Adachi et al. (2007) Appl. Entomol. Zool. 42(3):425-431
    2)足立、内野(2006)「果樹カメムシ類の捕獲器」特許出願2006-352235