豊産性で糖度が高く食味良好な生食用アンズ新品種「ニコニコット」

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要約

アンズ新品種「ニコニコット」は、「ライバル」に「アンズ筑波5号」を交雑して育成した品種である。自家結実性を有し、結実が極めて良好で収量が多い。また、糖度が高く、酸味が少なく、生食用として品質が優れる。

  • キーワード:アンズ、新品種、生食用、自家結実性、高糖度、豊産性
  • 担当:果樹研・ナシ・クリ・核果類研究チーム
  • 代表連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・育種
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

アンズはわが国で古くから栽培される果樹の一つであるが、在来品種は甘味が少なく酸味は強く、生食困難で専ら加工に用いられてきており、栽培地域や生産量も極めて限定されている。一方、海外から導入されたヨーロッパ系のアンズ品種は、果実の酸味が少なく、生食可能であるが、結実性や裂果などの問題があり、わが国では安定した生産が困難である。そこで、アンズの生産・消費拡大を図るため、品質優良で栽培性の優れた生食用アンズを育成する。

成果の内容・特徴

  • 1990年(平成2年)に農林水産省果樹試験場(現:農研機構果樹研究所)において、「ライバル」に「アンズ筑波5号」(「ニューキャッスルアーリー」×「甲州大実」)を交雑して育成した品種である。1999年(平成11年)から、「アンズ筑波12号」の系統名でアンズ第2回系統適応性検定試験に供試して検討した結果、2009年(平成21年)1月の同試験成績検討会において新品種候補として適当であるとの結論が得られた。2009年(平成21年)7月15日に品種登録出願し、同年9月24日に「ニコニコット」として出願公表された。
  • 花芽の着生はやや多く、自家結実性を有し、結実は極めて良好で「ハーコット」および「平和」に比べて収量が非常に多い。開花期は育成地で3月下旬であり、「ハーコット」および「平和」より数日早い。果実の収穫期は育成地で6月下旬であり、「ハーコット」と同時期で「平和」より10日程度遅い(表1)。
  • 果形は短楕円形で、果実重は90g前後、果皮の地色は橙色で着色は少ない。裂果の発生は少ない。果肉は橙色で、肉質は「ハーコット」や「平和」に比べて緻密で果汁はやや多い。糖度は約13%であり、「ハーコット」と同程度で、「平和」より5%余り高い。酸味はpH4.3前後であり、「ハーコット」と同程度で、「平和」に比べて明らかに少ない。従来の在来アンズ品種に比べて糖度が高く、酸味が少ないことから生食用としての食味が優れている(表1図1図2)。

成果の活用面・留意点

  • 既存のアンズ栽培地域で栽培が可能である。また、自家結実性を有するため、単植が可能である。
  • 結実が極めて良好であり、着果過多では小果となるため、摘果などの着果管理を適切に行う必要がある。また、既存のアンズ品種と同様に、樹上・収穫後の成熟果実の軟化が比較的速いため、適期収穫に努める。
  • せん孔細菌病、灰星病には罹病性であるが、通常の薬剤散布により被害を軽減することができる。
  • 苗木は2010年秋期より販売される予定である。

具体的データ

表1 育成地(茨城県つくば市)における「ニコニコット」の特性

図1 「ニコニコット」の結実状況

図2 「ニコニコット」の果実

その他

  • 研究課題名:高収益な果実生産を可能とする高品質品種の育成と省力・安定生産技術の開発
  • 中課題整理番号:213e.1
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:1990年~2008年度
  • 研究担当者:安達栄介、山口正己、土師 岳、八重垣英明、末貞佑子、三宅正則、西村幸一、中村ゆり、京谷英壽、鈴木勝征、木原武士、内田 誠、福田博之、小園照雄