ウンシュウミカンにおいて着果による翌春の花芽数減少は発育枝のカンキツFLOWERING LOCUS Tの発現の抑制と密接に関連する

要約

ウンシュウミカンでは、着果により11月~1月における発育枝のカンキツFLOWERING LOCUS T(CiFT)の発現が抑えられ、着果量が多いほど、着果期間が長いほどその抑制効果は強い。また、CiFTの発現量は翌春の花芽数と正の相関を示す。

  • キーワード:隔年結果、花成、FT、ウンシュウミカン、CiFT
  • 担当:果樹・茶・カンキツ
  • 代表連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 研究所名:果樹研究所・カンキツ研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

カンキツは、豊作と不作を交互に繰り返す隔年結果性の強い果樹である。この隔年結果は、当年の着果条件が翌春の花数に影響するために引き起こされる。本成果では、着果による花成抑制の分子機構を明らかにするために、ウンシュウミカンにおいて着果条件と花成制御遺伝子カンキツFLOWERING LOCUS T (CiFT)の発現量との関連を解析する。

成果の内容・特徴

  • 着果量の異なる普通ウンシュウミカンにおいて、葉面積あたりの収量と花成時期である11月から1月における発育枝のCiFT発現量は、高い負の相関を示す(図1A)。一方、11月から1月における発育枝のCiFT発現量は、翌春の花芽数と高い正の相関を示す(図1B)。
  • 1樹における3本の主枝ごとに着果期間の長さを変えた場合、11月のCiFT発現量はそれぞれの主枝で異なる値を示し、着果期間の長い主枝上の発育枝の茎組織で低くなる傾向にある(図2A)。一方、翌春の花芽数は着果期間の長い主枝上の発育枝ほど少なくなる傾向にある(図2B)。

成果の活用面・留意点

  • 本研究の成果は、着果によるCiFTの発現抑制が隔年結果の発生と密接に関連していることを示唆しており、隔年結果発生機構の解明に向けて重要な知見となる。
  • 11月から1月のCiFTの発現量が翌春の花芽数と高い相関を示すことから、CiFTの発現量を指標とした翌年の着花数予測技術の開発が期待できる。

具体的データ

図1 発育枝におけるCiFT発現量と葉面積あたりの収量(A)あるいは発芽節あたりの翌春の花芽数(B)との関連。図2 摘果時期の異なる3主枝における11月のCiFT発現量(A)および節あたりの翌春の花芽数(B)。

(西川 芙美恵)

その他

  • 中課題名:成熟期の異なる良食味のカンキツ品種の育成と省力生産技術の開発
  • 中課題番号:142c0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2008~2011年度
  • 研究担当者:西川芙美恵、岩崎光徳、深町浩、野中圭介、今井篤、瀧下文孝、遠藤朋子
  • 発表論文等:Nishikawa et al.(2011)J. Japan. Soc. Hort. Sci. 81(1):48-53.