JM台木を利用したリンゴ低樹高栽培における作業の省力効果

要約

JM台木を利用した「ふじ」と「つがる」樹に対して、定植年から主幹の切り返しと発出枝の誘引を行って側枝を形成した低樹高栽培では、慣行栽培と同等の収量を維持しつつ、摘花・摘果、着色管理、収穫、整枝・剪定の各作業時間を20%以上削減できる。

  • キーワード:リンゴ、わい性台木、低樹高栽培、省力化
  • 担当:果樹・茶・リンゴ
  • 代表連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 研究所名:果樹研究所・リンゴ研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

リンゴ栽培では、受粉、摘果、着色管理、収穫、整枝・剪定などの多大な労力が必要なため、これらの省力・軽労化が求められている。さらに近年は、栽培従事者の高齢化や女性化が加速度的に進んでおり、新しい技術開発による圃場作業の省力・軽労化がますます必要とされている。高品質なリンゴを効率よく生産する体制を確立するためには、わい性台木の導入、園地の整備、品種構成の見直しなどが考えられる。JM台木は果樹研究所で育成したわい性台木で、養成が容易で生産効率が高い利点を有している。このJM台木を利用した低樹高樹形の早期形成法を開発し、10年間にわたる低樹高栽培による栽培管理作業の省力効果を検証する。

成果の内容・特徴

  • 平成16年度果樹研究成果情報「リンゴわい性台木を使用した若木における低樹高化のための側枝形成法」に詳述したJM台木による低樹高栽培法により、10年間ほとんどの品種で樹高を3メートル程度に維持することに成功している(図1)。
  • 低樹高栽培では、植え付け7~10年の10a当たりの平均は、「ふじ」ではいずれの台木組み合わせにおいても3トン以上、「つがる」ではJM7台木で3トンの収量が得られた(図2)、「ニュージョナゴールド」ではJM1台を除く台木で、2.5トン以上の収量が得られている。また、樹勢の比較的弱い「さんさ」、「王林」では、他の品種に比べ収量が低いが、台木別ではJM7及びJM8で高い傾向が認められる(データ省略)。また、低樹高区と対照区の収量について整枝法による有意な差は認められない。
  • 「みしまふじ」及び「つがる」において、定植10~11年目の低樹高区では、対照区よりも摘花・摘果、着色管理、収穫、整枝・剪定の各作業に要する時間がそれぞれ20%以上短縮される(図3)。同様な傾向は「ニュージョナゴールド」、「さんさ」、「王林」と他のJM台木でも認められる(データ省略)。
  • 以上のことから、JM台木を利用した低樹高栽培では、スレンダー・スピンドル樹形を基本とする慣行栽培(対照)と比較して、同等の収量を維持しつつ主要な管理作業の省力化ができる。

普及のための参考情報

  • 普及対象 国内のリンゴ生産者
  • 普及予定地域・普及予定面積等 岩手県、青森県等のリンゴ栽培地域で100ha程度普及見込み。
  • その他 リンゴ栽培における省力化のための技術情報「JM台木を利用した低樹高栽培技術『側枝形成法』」を作成し、配布予定。

具体的データ

図1 JM7台木を用いた樹高の年次変化

図2 低樹高栽培でのJM台木別の収量

図3 低樹高栽培における管理作業の省力化

(和田雅人、守谷友紀)

その他

  • 中課題名:高商品性リンゴ等品種の育成と省力生産技術の開発
  • 中課題番号:142e0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2005~2011年度
  • 研究担当者:工藤和典、守谷友紀、本多親子、和田雅人、岩波宏、副島淳一、別所英男、猪俣雄司
  • 発表論文等:工藤(2011) リンゴ栽培における省力化のための技術情報JM台木を利用した低樹高栽培技術「側枝形成法」
    工藤 (2007) 農業技術体系 果樹編 追録第22号1-2,200の52-200の57