大果で食味が優れる早生セイヨウナシ新品種「ジェイドスイート」

要約

セイヨウナシ新品種「ジェイドスイート」は、「マルゲリット・マリーラ」に「ブランディワイン」を交雑して育成した早生の大果品種である。育成地で9月上中旬に収穫適期となり、15°C恒温で追熟容易である。甘みが多く極多汁で食味が優れる。

  • キーワード:セイヨウナシ、新品種、大果、早生、良食味
  • 担当:果樹・茶・リンゴ
  • 代表連絡先:電話 011-857-9260
  • 研究所名:北海道農業研究センター・水田作研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

セイヨウナシは冷涼な気候を好み、寒地・寒冷地での地域特産化による果樹産地振興が期待できる。セイヨウナシでは品質の優れる早生品種が望まれていることから、寒地・寒冷地で普及可能な、大果、高品質で追熟性等諸特性に優れた早生の新品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「ジェイドスイート」は、1992年に北海道農業試験場(現:北海道農業研究センター) において、「マルゲリット・マリーラ」に「ブランディワイン」を交雑して得られた実生から選抜した品種である。北海道、東北5県、長野県で系統適応性検定試験による検討を行った結果、品種化が承認され、種苗法にもとづく品種登録出願公表中である。
  • 「ジェイドスイート」は、育成地で「バートレット」とほぼ同時期の9月上中旬に収穫適期となる早生品種である。樹形は直立、樹勢および花芽着生は中程度で初期収量は「ブランディワイン」と同程度である。「ラ・フランス」対象のセイヨウナシ通常防除下では問題となる病害虫の発生は観察されていない。開花盛期は「バートレット」、「ブランディワイン」とほぼ同時期である(表1)。自家不和合性のS遺伝子型はSaSeで「オーロラ」、「プレコース」と交配不和合、「バートレット」、「ブランディワイン」、「ラ・フランス」と交配和合である。果実はびん形を呈し、果実重は290g程度、果皮は黄緑色で外観は美麗である。追熟は温度を15°C恒温とした慣行法で行うことができ、容易である。糖度は13~15%程度、酸度は0.1~0.2g/100ml程度で、既存の早生主要品種「バートレット」より糖度が2~3%高く、極多汁で食味が優れる(図1、表2)。
  • 育成地での調査では、標準追熟日数(15°C恒温)は10~14日で、追熟後の適食期は果実が軟化して果皮に緑色が少し残っている時期である(図2)。日持ち性は他のセイヨウナシ早生品種と同程度であり(表2)、高温条件下では果肉軟化が早い。

普及のための参考情報

  • 普及対象 北海道から長野県までの寒冷地のセイヨウナシ生産者
  • 普及予定地域等 北海道、長野県、岩手県等(許諾苗木生産業者数6県12業者)
  • その他
    許諾苗木業者による苗木の販売は2012年秋から開始されている。
    栽培・果実流通上の留意点は以下の通りである。
    (1) 育成地では通常、満開後110~120日で収穫適期となるが、セイヨウナシは生育期の気温条件で収穫適期判定の基準が異なるので、道県ごとに判定基準を作成する必要がある。
    (2) 果皮が弱く傷つきやすいので、防風に留意するとともに、収穫かごや収穫トレーに新聞紙などを敷くことで擦れ傷を防ぐなど果実の取り扱いをていねいに行う。
    (3) 追熟を20°C以下で行うと障害の少ない果実に仕上がる。追熟後、果皮色が完全な黄色になると過熟で、適食期を過ぎて内部褐変が始まっていることがある。

具体的データ

 表1~2,図1~2

その他

  • 中課題名:高商品性リンゴ等品種の育成と省力生産技術の開発
  • 中課題番号:142e0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1992~2012年度
  • 研究担当者:伊藤祐司、京谷英壽、中島二三一、工藤和典、水本文洋、加藤秀憲
  • 発表論文等:品種登録出願公表(2011年6月28日、出願番号25696)