肉用牛の肥育過程における血中インスリン濃度と屠体形質との関係

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要約

肥育牛の血中インスリン濃度は体重の増加に伴って上昇し、黒毛和種では褐毛和種やホルスタイン種より高い。また、血中インスリン濃度は枝肉体組織構成と相関があり、屠体形質の推定指標となる可能性がある。

  • 担当:九州農業試験場畜産部栄養・飼料研究室
  • 連絡先: 096-242-1150
  • 部会名: 畜産・草地
  • 専門: 飼育管理
  • 対象: 家畜類
  • 分類: 研究

背景・ねらい

肉用牛の肥育期間の長期化に伴い、屠体形質の早期判定技術の開発が強く望まれている。牛の成長、脂肪蓄積は内分泌の支配を受けていることから、個体の内分泌性状は屠体形質の推定指標として利用できる可能性がある。そこで、主要な同化ホルモンの一つであるインスリンの血中濃度と屠体形質との関係を、わが国で肉用に飼育されている3品種について検討した。

成果の内容・特徴

黒毛和種、褐毛和種およびホルスタイン種の去勢牛を肥育前期は粗飼料主体、肥育後期は濃厚飼料、粗飼料ともに飽食の同一の飼養条件で肥育して、肥育過程全期間にわたり経時的に血中インスリン濃度を測定し肥育終了後の屠体形質との関係を調べた。

  • 血中インスリン濃度は、いずれの品種においても体重増加に伴って上昇し、黒毛和種では褐毛和種、ホルスタイン種よりも高かった(図1)。
  • 肥育過程全期間平均の血中インスリン濃度と、枝肉左半丸中の赤肉の割合とは負(-)の、脂肪の割合とは正(+)の関係が、いずれの品種でも認められた(図2、3)。
  • 以上の結果は、血中インスリン濃度が品種間で異なり、肥育過程において血中インスリンレベルをモニターすることにより、枝肉組織構成を予測できる可能性があることを示している。

成果の活用面・留意点

  • 同一の飼養条件のもとで肥育されている肉用牛群内における肥育進行程度の推定等に利用できる。
  • 血中インスリン濃度は、栄養状態や採食などの影響も受けるので、採血条件を一定にして経時的に複数回、測定する必要がある。

具体的データ

図1 各品種の血中インスリン濃度の推移

図2 肥育過程全期間平均の血中インスリン濃度と枝肉中の枝肉割合との関係

図3 肥育過程全期間平均の血中インスリン濃度と枝肉中の脂肪割合との関係

 

その他

  • 研究課題名:肥育過程における血中代謝成分ならびに同化ホルモンの品種特性褐毛和
                      種における成長及び脂肪蓄積能の早期判定技術
  • 予算区分 :特別研究(産肉特性)
  • 研究期間 :平成6年度(平成2~5年)
  • 発表論文等:Plasma concentrations of growth hormone, insulin and
                      metabolites in Japanese black, Japanese brown and Holstein
                      steers during growing and fattening period., Proceedings of the
                      Society of Nutrition Physiology(Abstracts of Communications
                      VIII I.S.R.P.) 3, p278, 1994.