サツマイモネコブセンチュウのレース新判別法と九州沖縄におけるレースの分布

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要約

かんしょ品種を用いたサツマイモネコブセンチュウのレース新判別法を確立した。中南部九州・沖縄のかんしょ産地には、判別品種の「農林1号」、「農林2号」、「種子島紫7」、「エレガントサマ-」および「ジェイレッド」での増殖率が異なる7レースが、地域により特異的に分布する。

  • キーワード:サツマイモネコブセンチュウ、かんしょ、レ-ス判別、品種抵抗性
  • 担当:九州沖縄農研・地域基盤研究部・線虫制御研究室
  • 連絡先:096-242-7734
  • 区分:九州沖縄農業・病害虫
  • 分類:科学・普及

背景・ねらい

サツマイモネコブセンチュウは、九州・沖縄地域の主要畑作物、特に、かんしょの生産上、最も重要な有害線虫である。線虫抵抗性品種の効果的な育成や適切な栽培、線虫密度抑制に有効な作付け体系の開発を図るために、かんしょ品種に対する当該線虫の寄生性の違いを明らかにし、これに基づくレ-ス判別法を確立するとともに、地域内における分布を解明する。

成果の内容・特徴

  • 線虫のレースを判別するかんしょ品種として、「農林1号」、「農林2号」、「エレガントサマ-」、「種子島紫7」および「ジェイレッド」を用いる(表1)。
  • レースを判別しようとする線虫は、単卵嚢から増殖させた個体群を用いる。レ-ス判別には、200~300個の卵嚢から25℃で2昼夜孵化させた新鮮な2期幼虫を供試する(図1)。
  • レースの判別を行うため、線虫を次の方法で増殖する。殺菌土200gを入れたポリエチレンポットに各判別品種の1節苗を移植し、500頭の2期幼虫を接種する。人工気象室(25℃から30℃)で栽培し、35日後に根系を洗った後、0.5%フロキシンB水溶液で染色し、着生した卵嚢を計数する。各品種とも5反復以上とする(図1)。
  • レ-スの判別は、「卵嚢数×274(増殖率10倍以下の抵抗性やや強の品種に形成された卵嚢の平均蔵卵数)/500(接種幼虫数)」によって算出した増殖率を基準として、増殖率1倍以下を-、2倍以上を+として表2に従って行う(表2)。
  • この判別方法によると、中南部九州および沖縄県のかんしょ産地には7レ-スが存在し、地域により特異的に分布している。分布の特徴は、熊本県ではSP1が81%を占め、SP2、SP3およびSP6が局地的に分布、宮崎県ではSP2が72%を占め、その他にSP1とSP6が局地的に分布、鹿児島県の大隅半島と薩摩半島ではSP2が95%、他の島嶼部ではSP3以外のレ-スが散発する。沖縄県ではSP4が55%を占め、その他にSP3以外のレ-スが局地的に分布する(表3)。

成果の活用面・留意点

  • かんしょのサツマイモネコブセンチュウ抵抗性の遺伝解析、抵抗性育種の参考になる。
  • 線虫害回避のための抵抗性品種の栽培や線虫密度抑制に有効な作付け体系の開発に役立つ。
  • 線虫抵抗性は高温で打破される場合が多いことから、検定は30℃以下で行う。また、増殖率が2~10倍の個体群は再検定等により確認することが望ましい。

具体的データ

図1 レ-ス判別の流れ 表1 サツマイモネコブセンチュウ4個体群の増殖率に基づくレ-ス判別用かんしょ品種の選定

 

表2 かんしょ品種を用いたサツマイモネコブセンチュウのレ-ス判別表

 

表3 九州沖縄のかんしょ産地において検出されたサツマイモネコブセンチュウのレ-スとその検出頻度

その他

  • 研究課題名:かんしょの有害線虫の環境保全型総合防除技術の開発
                      -南九州の主要線虫レ-ス とそれらに対するかんしょ等の抵抗性評価
  • 予算区分:21世紀プロ
  • 研究期間:1999~2001年度
  • 研究担当者:佐野善一、岩堀英晶、立石 靖
  • 発表論文等:1)佐野善一・岩堀英晶(2000) 日本線虫学会誌 30巻:60-61.
                      2)佐野善一・岩堀英晶(2000) 九州病害虫研究会報 46巻:168-169.