暖地において晩播栽培した点播水稲の生育と収量

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要約

代かき同時土中点播水稲における晩播(6月下旬播種)は6月上旬播種に比べて最高分げつ期まで個体群生長速度は低く推移し、乾物増加当たりの窒素吸収量は幼穂分化期まで高く推移するため、十分な総籾数を得やすくなり、同等の収量を確保できる。

  • キーワード:点播水稲、晩播、個体群生長速度、窒素吸収量、総籾数
  • 担当:九州沖縄農研・水田作研究部・水田作総合研究チーム
  • 連絡先:電話0942-52-0694、電子メールfuruhata@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・水田作
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

安定性の高い水稲直播様式である代かき同時土中点播栽培を軸とした稲・麦・大豆の暖地水田輪作において、本栽培技術では作期競合を解消するため、6月下旬の播種体系の確立が望まれている。しかし、晩播では普通期播きに比べて、生育・収量や品質の不安定化が懸念されるため、品種と栽培法の改善が必要となる。一般に暖地水稲では初期の生育過剰による生育中期の窒素吸収量低下が籾数不足による減収に結びつくと考えられている。このため、熟期を異にする品種・系統について晩播での生育・収量の特徴を普通期播きとの対比で明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 晩播(6月下旬播種)における各生育時期は普通期播き(6月上旬播種)のそれより一週間前後遅れる(表1)。
  • 晩播では普通期播きに比べて分げつ盛期から最高分げつ期までの期間では個体群生長速度は低く推移する(図1)。
  • 晩播では普通期播きに比べて乾物増加当たりの窒素吸収量は幼穂分化期まで高く推移する(図2)。
  • 晩播では普通期播きに比べて出穂期は早生、中生で6日から10日前後遅れるが、総籾数は増加する傾向を示し、収量は同等に確保できる。また耐倒伏性は低下しない(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 暖地における晩播水稲の栽培技術確立に用いる。
  • 本試験は所内の細粒灰色低地土で行い、点播条件は普通期播き、晩播ともに条間30cm、株間20cm(16.7株/m2)、施肥条件(窒素施用量:kg/10a)は普通期播きで基肥(緩効性):6、穂肥(速効性、2回):4、晩播で基肥(緩効性):5、穂肥(速効性、2回):3.5、出穂期まではほぼ平年並みの気象であった。
  • 出穂期の遅いヒノヒカリを晩播栽培した場合は登熟気温の低下によって減収が懸念される。
  • 晩播栽培が品質に及ぼす影響については今後の検討が必要である。

具体的データ

表1 晩播(6月下旬播種)水稲における供試3品種の生育時期の比較

 

図1 個体群生長速度(CGR)の推移 図2 乾物増加当たり窒素吸収量の推移

 

表2 晩播水稲の収量および収量構成要素.

 

その他

  • 研究課題名:暖地水田高度輪作体系における水稲の晩播栽培技術の開発
  • 予算区分:21世紀プロ5系
  • 研究期間:2001~2002年度
  • 研究担当者:古畑昌巳、吉永悟志、森田弘彦、山下浩、田坂幸平