黒穂病に強く株出多収なサトウキビ新品種「NiTn19」

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要約

サトウキビ「NiTn19」は、分げつが旺盛で茎数が安定して多く、黒穂病抵抗性を具えるため、株出栽培に適する。発芽性に優れ、欠株が少なく、春植、株 出、夏植の3作型で安定して多収である。黒穂病汚染地域や茎数不足によって新植や株出の収量が低い地域に普及することによって生産の安定が図れる。

  • キーワード:サトウキビ、安定多収、良分げつ性、良発芽性、黒穂病抵抗性
  • 担当:九州沖縄農研・作物機能開発部・さとうきび育種研究室
  • 連絡先:電話0997-25-0100、電子メールyoshifum@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・畑作
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

沖縄県八重山地域は、夏植が全作型の67%を占めていることから、土地利用効率が低く、生産量が伸び悩んでおり、夏植1作型から、春植、株出、夏植の均衡 のとれた作付け体系への移行が求められている。沖縄県北部地域は、春植、株出体系であるが、痩せ地、干ばつ等の影響から単位収量が低く、生産量の減少が激 しい。さらに、近年、両地域において黒穂病の被害が問題になってきている。そこで、黒穂病に強く、春植、株出、夏植の3作型で安定して多収性を発現する品 種を育成し、両地域におけるサトウキビ生産の安定・向上を図る。

成果の内容・特徴

  • 「NiTn19」は、葉の病害に強く、春植、株出共に多収である「F172」を母本に、糖度はやや低いが茎数が多い「RF81-208」を父本にして1991年に交配を行い、1992年に実生を植付けて以降、収量性を重視して選抜した品種である。
  • 発芽性、分げつ性が優れることから、欠株が少なく、茎数が多いため、「Ni9」、「F177」と比較して春植、株出、夏植共に安定して原料茎重、可製糖量が多い。
  • 可製糖率は、「Ni9」、「F177」と同程度かやや低い。
  • 株出栽培で発病の多い黒穂病に対する抵抗性が“極強”であり、「Ni9」、「F177」と比べて明らかに強い。

成果の活用面・留意点

  • 沖縄県八重山地域では「Ni9」、「F172」の代替として用いる。
  • 沖縄県北部地域では「Ni9」、「F177」の代替として用いる。茎数型で「Ni16」に比べ耐倒伏性と風折抵抗性が強いの で、茎数不足や倒伏により収量が不安定な地域に適し、茎伸長の不良な地域では茎伸長の優れる「Ni16」を用いる。黒穂病抵抗性が極強で「Ni16」より 強いため、黒穂病汚染地域における栽培にも有用性が高い。
  • 糖度の上昇がやや遅いことから、早期収穫ではなく晩期収穫を心がける。

具体的データ

表1.サトウキビ新品種候補系統「KF93T-509」の特性概要

 

その他

  • 研究課題名:南西諸島の低収量地域でも株出し多収性を発現するさとうきび品種の育成
  • 課題ID:07-03-05-01-06-03
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:1991~2005年度
  • 研究担当者:寺島義文、杉本明、氏原邦博、岡三徳、勝田義満、前田秀樹、下田聡、水本文洋