多収で葉枯病に強い温暖地、暖地向けはとむぎ新品種「あきしずく」(旧系統名 九州1号)

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要約

はとむぎ「あきしずく」は熟期が中生で関東以南の栽培地域に適する。短稈で耐倒伏性が強く、茎数が多くて多収である。葉枯病に比較的強く、製茶加工適性はよい。

  • キーワード:ハトムギ、中生、葉枯病、製茶、多収
  • 担当:九州沖縄農研・バイオマス・資源作物開発チーム
  • 連絡先:電話096-242-7636、電子メールttesuka@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・畑作、作物・夏畑作物
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

はとむぎの国内産品に対する需要は増加しており、実需者からは生産拡大の要望が強い。中国地方の産地では、防除や収穫作業の省力できる短稈多収品種が求められている。また、長年にわたりはとむぎが栽培されているために葉枯病の発生が認められ、抵抗性品種の導入が求められている。関東地方の産地では、収穫物の品質が良くて実需者からの評価が高い。このため、需要に対応した生産の拡大を図るために、多収品種の導入が求められている。そこで、関東地方以南に適する中生の安定多収品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「あきしずく」は中生、短稈、多収を目標に、1996年九州農業試験場資源作物研究室(熊本県合志市)において、韓国からの導入品種「光州」(JP83421) を母本、 岡山在来の短稈突然変異系統EMS200-2-d-10-4-2-4を父本にして交配し、系統育種法で選抜、固定を図ってきたものである。
  • 出穂期は「はとむすめ」「はとひかり」より1~2日遅く、成熟期は「はとむすめ」「はとひかり」とほとんど同じで、九州では中生の熟期である(表1)。
  • 草丈は「はとむすめ」、「はとひかり」よりやや短く、耐倒伏性が強く、茎数は多い。幼苗時の葉鞘色は赤紫で、「はとむすめ」、「はとひかり」と異なる(表1)。開花期の柱頭色は濃赤紫で、「はとむすめ」、「はとひかり」の白と異なる。
  • 百粒重は「はとひかり」より軽く、「はとむすめ」よりやや重い。着粒層は「はとむすめ」、「はとひかり」とほぼ同じである。子実歩留は「はとむすめ」と同じで、「はとひかり」より低い(表1)。
  • 葉枯病抵抗性は比較的強く、「はとむすめ」「はとひかり」より強い(表1)。
  • 製茶加工適性は焙煎粒に艶があり、色揃いがよく、総合的に良である。精白粒の白度は「はとむすめ」「はとひかり」と同じである(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 関東地方以南の栽培地域に適する。栃木県と広島県、福岡県で普及予定である(普及見込み面積200ha)。
  • 「はとむすめ」「はとひかり」と同様に脱粒しやすいので、刈り取り適期に収穫する。
  • 葉枯病に対しては比較的強いが、種子消毒や生育期の薬剤防除(ロブラール水和剤)は必ず実施する。
  • 「あきしずく」の幼苗期は葉身および葉鞘が赤紫色であり、他品種は緑色なので、異株は幼苗期に抜き取る。

具体的データ

表1 「あきしずく」の特性一覧

表2 「あきしずく」の製茶加工特性(栃木県K 社)

表3 「九州1 号」の精白粒の品質特性

その他

  • 研究課題名:暖地・南西諸島の農業を支えるさとうきび等資源作物の低コスト安定生産技術の開発
  • 課題ID:211-g
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:1996~2006年度
  • 研究担当者:手塚隆久、松井勝弘、原貴洋、森下敏和