クラウン部冷却による四季成り性イチゴの連続出蕾性と果実肥大の向上効果

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要約

クラウン部の近傍温度を精度よく制御できる装置を用いて、夏秋季に四季成り性品種のクラウン部近傍温度を23°C以下に冷却すると、連続出蕾性が向上し、果実の痩果数、正常稔性率が高くなり、果実肥大が優れ、商品性が向上する。

  • キーワード:四季成り性イチゴ、クラウン、冷却、連続出蕾性、果実品質
  • 担当:九州沖縄農研・イチゴ周年生産研究チーム
  • 連絡先:電話0942-43-8362、電子メールskaz@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・野菜花き、野菜茶業・野菜栽培生理
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

近年、イチゴ栽培では四季成り性品種の導入による収益機会の拡大が注目されている。しかしながら、夏季に高温条件となる九州等の西南暖地では寒冷紗を用いた遮光等による昇温抑制技術が導入されているが、不受精による奇形果および小玉化等による果実品質の低下や9月以降の花芽の分化抑制等に十分な改善効果が得られず、夏秋どり作型の導入例は少ない。
そこで、生長点が存在し草勢および花芽分化等の生育および生理的に重要な器官であるクラウン部の温度を効果的かつ直接的に制御する局部冷却法が、夏秋季における四季成り性の安定性の異なる品種の連続出蕾性と果実品質に及ぼす影響について明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 四季成り性品種の「エバーベリー」および「サマーベリー」は、クラウン部の近傍温度を精度よく制御できる装置(図1)を用いて、夏秋季に冷却処理することにより、果房間葉数が減少することで出蕾花房数が増加し、ランナー発生は減少する。その効果は四季成り性の安定した「エバーベリー」より、四季成り性が不安定な「サマーベリー」で大きい(表1)。
  • クラウン部の冷却により果実の痩果数、正常稔性率が高くなり、果実肥大が優れ、商品性が向上する(表2)。
  • 西南暖地の夏秋季における四季成り品種はクラウン部のみの管理温度の違いにより、展開葉数、定植後10枚目以降最初に出蕾した花房までの内葉数および平均果房間葉数が異なり、クラウン部近傍温度を18℃~23℃で管理すると平均果房間葉数が減少し、連続出蕾性が高まる(表3)。

成果の活用面・留意点

  • チラー等から供給された冷温水を管内に循環させ、クラウン部のみを精度よく温度制御できる装置は、生理生態反応をより詳細に解明する手法としても利用できる。

具体的データ

表1 クラウン部への局部冷却処理が四季成り性品種の出蕾およびランナー発生に及ぼす影響

図1 クラウン部の温度管理の状況

表2 「エバーベリー」におけるクラウン部への局部冷却処理が果実肥大に及ぼす影響

表3 クラウン部の管理温度の違いが展開葉数および花芽分化に及ぼす影響

その他

  • 研究課題名:西南暖地におけるイチゴの周年高品質生産技術の開発
  • 課題ID:213-b
  • 予算区分:高度化事業(R1BZBDb1)
  • 研究期間:2005~2006年度
  • 研究担当者:曽根一純、沖村誠、壇和弘、北谷恵美