輸送中の物理的障害を75%軽減できるイチゴ包装容器

要約

開発した包装容器は伸縮性フィルムを展張した合成樹脂製の外装と汎用ホールトレーからなり、イチゴ等の軟弱果実の輸送に適する。従来の包装容器に比べ、果実の物理的傷害を1/4以下に軽減でき、簡易な包装形態による新たな販売体系の構築が可能である。

  • キーワード:イチゴ、包装容器、輸送、傷み軽減、多様な販売形態
  • 担当:九州沖縄農研・イチゴ周年生産研究チーム
  • 代表連絡先:電話0942-43-8362
  • 区分:九州沖縄農業・野菜・花き、野菜茶業・野菜品質(機能性)
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

イチゴの輸出に関しては、東アジア諸国向けを中心に贈答用大玉果実の需要が増加している。しかし、輸出にはウレタンを敷いたトレーもしくはホールトレーに1段平詰め仕様等の国内出荷と同様の包装形態で行われるため、国内でのトラック輸送、航空機の離着陸や粗雑な荷扱い等の輸送過程で生じる物理的傷害が問題となっている。そこで、これらの物理的傷害を抑え、より品質が保持できる包装資材を開発する。   

成果の内容・特徴

  • 本包装容器は合成樹脂製の容器の内側に伸縮性フィルムを展張し、伸縮性フィルムにより果実とホールトレーを挟み込むように固定することで果実の動きを抑制し、輸送中の果実の傷みを軽減する(図1)。
  • 専用のトレーを必要とせず、市販の各種ホールトレー(23.5cm×16.5cm程度)をそのまま用いる(図1)。
  • 実輸送試験の結果、従来の平詰めスポンジ敷き仕様と比較して、トレー接触面側の押し傷等による物理的傷害程度を大幅に軽減でき、傷み程度を示す溶出液電気伝導度は1/4以下に低下し、商品性の低下を最小限に抑えることができる(表1)。なお、糖度、酸度、硬度、果皮色の果実品質については、包装形態の違いによる有意差は認められない(データ略)。
  • 容器自体が外装を兼ねているので、従来の段ボール等を利用した輸送形態よりも、より簡易な外装での発送が可能である(図2)。

成果の活用面・留意点

  • さまざまな陳列形態に対応可能で、アイデアを活かした販売スタイルが提供でき、これまで対応が難しかったお土産、観光農園等の持ち帰り需要やインターネット等を用いた直販に、より柔軟に対応可能である。さらに、これまで以上に広域流通に対応できるので、海外輸出を含め、販路拡大につながる(図2)。
  • トレー内の果実同士の接触は、接触面に傷みを生じる原因となるので、果実の大きさ、品種毎の果実の形状に対応したホールトレーを用いる。
  • イチゴ以外のオウトウ等の軟弱果実にも、容器のサイズ、トレーの変更により対応できる。
  • 本包装容器は、日本トーカンパッケージ(株)から販売されており、希望小売販売価格は200円/個である。

具体的データ

 

図1 新包装容器の概要

表1 輸送試験における新包装容器と従来型平詰めスポンジ敷き仕様との包装形態の違いが果実の傷み程度に及ぼす影響

表1 輸送試験における新包装容器と従来型平詰めスポンジ敷き仕様との 包装形態の違いが果実の傷み程度に及ぼす影響 図2 簡易な包装と多様な販売形態 (曽根一純)  /></p>
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(曽根一純)

その他

  • 研究課題名: 寒冷・冷涼気候を利用した夏秋どりいちご等施設野菜の生産技術と暖地・温暖地のいちご周年生産技術の確立
  • 中課題整理番号: 213b.2
  • 予算区分:実用技術、研究強化費
  • 研究期間: 2008 ~ 2009 年度
  • 研究担当者:曽根一純、伊東良久(日本トーカンパッケージ(株) )
  • 発表論文等:伊東良久、曽根一純「包装容器」特開2010-168083