甘しょのβ-アミラーゼ活性の簡易測定法

※アーカイブの成果情報は、発表されてから年数が経っており、情報が古くなっております。
同一分野の研究については、なるべく新しい情報を検索ください。

要約

合成試薬であるp-nitrophenyl-α-D-maltopentaoseを基質に用いて、甘しょのβ-アミラーゼ活性が測定できる。本法は従来の可溶性澱粉を基質とした還元糖測定法よりも簡便で、測定に要する時間も短い。

  • 担当:農業研究センター・作物生理品質部・資源作物品質評価研究室
  • 連絡先:0298-38-8563
  • 部会名:作物生産
  • 専門:食品品質
  • 対象:いも類
  • 分類:研究

背景・ねらい

甘しょの甘味には、生いも中に存在する単糖類、少糖類のほか、加熱過程に生育するマルトースの寄与が大きい。そこで、甘味生成に寄与する因子の一つであるβ-アミラーゼの活性を簡易に測定できる方法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 合成試薬であるp-nitrophenyl-α-D-maltopentaose(PNPG5)を基質として用いることにより(図1)、甘しょのβ-アミラーゼ活性が測定できる。
  • 生いもの小片(2~3mm角程度)を2倍量程度の水とともにホルジネートとし、遠心分離(10000×g程度、10分間)により酵素抽出液を得る。水及び緩衝液(後述)で5000倍程度に希釈し、活性測定に供する。
  • 本法では、pH5.6付近に最適pHのピークがあるため(図3)、クエン酸ナトリウム緩衝液(反応時の濃度20mM程度)を用いてpHを整える。
  • 酵素液0.2mlと基質液0.2ml(PNPG5 4.75mg/ml、α-グルコシダーゼ 100U/ml)を別々に40°Cで2分間プレインキュベイションした後混合し、10分間反応させる。1%トリスヒドロキシメチルアミノメタン3mlを加え て反応を停止させ、生成したパラニトロフェノール量を410nmの吸光度で測定する(図2)。
  • 従来の可溶性澱粉を基質として生成した還元糖測定によるβ-アミラーゼ活性測定法と比較して、還元糖測定の際の加熱等の煩雑な操作がないため簡便である(図2)。
  • 酵素液抽出以後、希釈操作を含めて、14点の試料の測定に要する時間は、従来の還元糖測定法が3時間であるのに対し、本法では1時間である。
  • 還元糖測定法と本測定法の測定値の間には、高い相関関係がある(図4)。
  • 本法では特殊な装置・器具を必要としない。

成果の活用面・留意点

酵素液を希釈した際に、作物によっては希釈に伴うβ-アミラーゼの失活を防止するために牛血清アルブミン等の添加を必要とするが、甘しょでは必要ない。
測定キット(商品名:BETAMYL)はMegazyme社(オーストラリア)から販売されており、薬品会社から入手できる。

具体的データ

図1 PNPG5法の原理

図2 βーアミラーゼ活性測定スキーム

図3 PNPG5法において反応液pHがβーアミラーゼ活性測定値に及ぼす影響

図4 還元糖測定法とPNPG5法の相関

その他

  • 研究課題名:甘しょの各種品質迅速検定法の開発
  • 予算区分 :総合的開発研究(高収益畑作)
  • 研究期間 :平成6年度(平成4年~6年)