実用的特性を持つ新規プロモーター

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要約

イネゲノム解析データを基に、組織特異的な発現パターンを示すcDNAクローンを選定し、それらのプロモーター領域をイネゲノムより単離した。単離したプロモーター領域は想定した組織特異的発現パターンを有している。

  • キーワード:イネゲノム、組織特異的発現、cDNA、プロモーター
  • 担当:中央農研・北陸地域基盤研究部・稲育種工学研究室
  • 連絡先:0255-26-3238
  • 区分:関東東海北陸農業・北陸・生物工学
  • 分類:科学・普及

背景・ねらい

病害抵抗性等の実用的な形質を付与された組換えイネ作出のためには、導入する遺伝子を必要箇所に限定して発現させ、米では発現させないことで消費者からの理解(パブリックアクセプタンス:PA)を得る等の工夫が必要であり、遺伝子の発現装置(プロモーター)の選択が重要である。研究開発でしばしば用いられる既存のCaMV35Sプロモーターでは導入遺伝子がイネ全体で発現してしまうだけでなく、実用化目的での研究開発では先行特許により使用の制限を受ける可能性があるため、独自のプロモーターの開発が不可欠である。そこでイネゲノムプロジェクトでのcDNA大量解析の結果を利用して、新規な特性を有するプロモーターを開発し、実用的な組換えイネ作出に供する。

成果の内容・特徴

  • イネゲノムプロジェクトの解析結果から目的のcDNAクローン(植物体全体で発現するもの、緑葉特異的に発現するもの、及びカルスで特異的に発現するもの各1)を選定した。各々の塩基配列を比較検討して正確な遺伝子配列を確定後、その転写調節領域を新規プロモーターとして単離した。単離した緑葉特異的プロモーターは病害抵抗性の付与、カルス特異的なものは選択マーカー遺伝子の発現等の用途に適した特性を有している。
  • プロモーターの発現特性を解析するため、青色発光ダイオード(青色LED)を光源とした、広範囲に青色の励起光が照射できる観察システム(図1)を開発した(特許出願)。緑色蛍光蛋白質(GFP)をマーカーとして用いることで、広い照射範囲下で非破壊的に継続した観察が可能である。
  • この観察システムを用いて、単離したプロモーターのイネの様々な組織における発現特性を検討し実証することができた(図2および表)。
  • 単離したプロモーターに制限酵素認識部位付加等の改変を加えたことにより、既存のプロモーターと置換したベクターを容易に構築することができる。

成果の活用面・留意点

  • 開発したプロモーターは導入遺伝子の発現を目的とする組織に限定できるため、発現を必要としない組織での代謝産物の浪費を避けることができ、収量性への影響やPA問題への対応においても優れている。
  • これらのプロモーターは新規性が高く、先行特許によって使用が制約されたプロモーターに代替できる。

具体的データ

図1 青色LEDを使用した非破壊観察システム

 

図2 米粒における単離した3種類のプロモーターによるGFPの発現

 

表 単離した3種類のプロモーターのイネにおける発現部位

その他

  • 研究課題名:実用的な組換え体作出のための遺伝子導入用ツールボックスの開発
  • 予算区分:組換え植物
  • 研究期間:1999~2001年度
  • 研究担当者:大槻寛、大島正弘
  • 発表論文等:1) 大槻・大島(特開2001-269171)