ダイズの湿害軽減のための広畦成形・浅耕播種技術

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要約

小明渠作溝による広高畦化と浅耕播種を組み合わせることでクラスト形成が抑制され、排水性が改善して麦跡ダイズの湿害が軽減される。これを実現するため開発した作業技術として、乗用管理機もしくはトラクタを基幹とする2方式がある。

  • キーワード:ダイズ、浅耕播種、広畦、小明渠作溝、クラスト、湿害軽減、乗用管理機
  • 担当:中央農研・関東東海総合研究部・東海大豆研究チーム
  • 連絡先:電話059-268-4610、電子メールnarc-seika@naro.affrc.go.jp
  • 区分:関東東海北陸農業・関東東海・総合研究、関東東海北陸農業・作業技術、共通基盤・総合研究
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

東海地域ではイネ・ムギ・ダイズの2年3作が一般的であるが、麦・ダイズの本作化に伴いダイズ栽培が透・排水性の不良な水田にまで拡大される傾向にあり、作土層が薄く暗渠の施工が困難な地域では、クラスト形成や湿害によりダイズが出芽不良となる事例が多い。また、一般的に行われている額縁明渠や5~10m間隔の明渠だけでは多雨条件の表面排水が不十分な場合がある。
そこで、クラスト形成や排水不良によるダイズの湿害を軽減するため、小明渠作溝による広高畦化と浅耕播種を行う作業技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 麦跡圃場では小明渠と浅耕播種とを組み合わせることで、①クラスト形成の抑制(図1)、②降雨後の排水性の向上(図2)が図られ、多雨条件でのダイズの欠株率が低下する(図3)。また、浅耕では普通耕に比べて地耐力が高く、管理作業機、コンバイン等の作業可能な条件が拡大する(デ-タ略)。
  • 以上のような効果を実現するために開発した作業技術は、小~中規模の経営を対象とした乗用管理機を基幹とする方式、大規模経営に対応可能な一般トラクタを基幹とする方式の2方式がある(図4)。
  • 乗用管理機を基幹とする方式は、小明渠作溝と浅耕同時播種を別作業で行い、それぞれの作業能率は0.30h/10a、0.75h/10a程度である。この方式では、収穫作業を除く耕うん播種から管理作業まで乗用管理機のみで行える。また、乗用管理機の輪距と小明渠の間隔が同じであり小明渠を走行路として利用することから、小明渠作溝後の浅耕播種作業や管理作業を安定して行える。
  • 一般トラクタ方式では小明渠作溝と浅耕播種を同時に行う。小明渠作溝同時浅耕播種機は浅耕ロータリ部、小明渠作溝部、施肥播種部から構成される。小明渠作溝同時浅耕播種の作業能率は約0.33h/10aであるが、市販の除草剤散布機を装着することにより播種同時除草剤散布が可能であり、更に作業性の向上が図られる。

成果の活用面・留意点

  • 暗渠の施工が困難な圃場や透・排水性の不良な圃場で有効であるが、排水性を確保するには、小明渠を額縁明渠等の排水溝に確実につなげる必要がある。
  • 小明渠は干ばつ時の潅漑水路として利用できる。
  • 一般トラクタ方式の小明渠作溝同時浅耕播種機の改造に必要な資材費は約8万円であり、一般的な工作機器があれば自作可能である。

具体的データ

図1 耕うん法とクラスト硬度の関係 図2 耕うん法と土壌水分変化

 

図3 耕うん法と欠株率およびダイズ収量の関係

図4 小明渠作溝・浅耕播種2方式と小明渠・広畦・浅耕播種の概要

その他

  • 研究課題名:麦・大豆の広畦・浅耕栽培を基軸とした大豆の新栽培体系の開発
  • 課題ID:03-01-01-01-23-04
  • 予算区分:ブラニチ2系
  • 研究期間:2003~2005年度
  • 研究担当者:渡辺輝夫、松尾和之、増田欣也、中西幸峰(三重科技セ)