ロングマット水耕苗の安定育苗のための肥料処方の改善

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要約

アンモニア態窒素の割合を高めた肥料処方により、電気伝導度が高く炭酸水素イオン濃度が高い水質の劣る用水でも、ロングマット水耕苗が安定的に育苗でき、移植後の生育もよくなる。

  • キーワード: 水稲ロングマット水耕苗、肥料、水質、アンモニア態窒素、育苗
  • 担当:中央農研・関東東海総合研究部・総合研究第2チーム
  • 連絡先:電話029-838-8822、電子メールnarc-seika@naro.affrc.go.jp
  • 区分:関東東海北陸農業・総合研究、関東東海・水田畑作物、共通基盤・総合研究
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

ロングマット苗移植栽培においては、苗の良否が移植精度にも影響するため、育苗が重要な要因である。ただし水耕育苗においては、水 質により生育が変わり、特に、関東平坦部に比較的多い、電気伝導度(EC)が高く炭酸水素イオン濃度も高い、水質の劣る用水では、pHが高く推移し、苗の 生育が悪い場合が多い。対策として、3種の肥料を混合する方法(H12成果)や雨水を使う方法(H15成果)を提案したが、より簡易で安定した育苗方法を 確立する。

成果の内容・特徴

  • ロングマット苗を安定的に育苗するために開発した2種類の肥料処方がある(表1)。 両処方とも、養液中の濃度が高いと生育を不安定とするCaOは含まず、必要分は用水から供給されることを前提に設計している。改良1処方に比べて改良2処 方は、アンモニア態窒素の割合を高めたものである。両処方とも市販の2肥料を混合する。事前に溶解して混合することも可能で、施肥作業が容易である。
  • 水質が悪い現地1や現地2の用水では、改良2の処方によりpHが低下し葉色の濃い苗ができる。一方、中央農研の用水の場合には、改良2の処方ではpHの低下が大き過ぎて、根長が短く根張りも劣るため、改良1の処方がよい(表2)。
  • 改良処方の苗は、移植後18日目の地上部重が大きくなり(図1)、移植後の生育が改善される。
  • ECが40mS/m以下で炭酸水素イオン濃度が100ppm以下の用水(図2右A,Bの範囲)の場合には、改良1の処方が適用できる。それより水質の劣る用水では改良2の処方により生育を改善でき、安定的に育苗できる(図2右C)。

成果の活用面・留意点

  • 改良処方はあわの発生が多い場合があり、電極棒式液面スイッチ(フロートレススイッチ)の自動給水では誤作動の危険性がある。
  • ロングマット苗の育苗を初めて行う時には、前もって普及センターなどに必ず水質(pH, ECなど)の調査を依頼する。炭酸水素イオン濃度が不明の場合には、まず改良1処方で育苗し、葉色が淡いなど生育が思わしくない時には改良2の処方を試す。
  • 育苗は「ロングマット苗の育苗・移植技術マニュアルVer.2(中央農研)」に準じて行う。

具体的データ

表1.各肥料処方における要素添加量と使用肥料

 

図1 処方の違いと移植18日後の生育

 

図2 肥料処方の違いによる水質とロングマット苗の生育との関係

 

その他

  • 研究課題名: 広域適応性をもつ水稲ロングマット苗移植技術の確立
  • 課題ID: 03-01-03-01-08-05
  • 予算区分: 交付金
  • 研究期間: 2004∼2005年度
  • 研究担当者: 北川 寿、白土宏之、岡田謙介、松崎守夫、安本知子