高品質な稲発酵粗飼料の調製が可能な自走細断型飼料イネ専用収穫機

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要約

本機は飼料イネを低馬力で細断し、穂先と株元を混合撹拌することで高密度なロールベールを形成できる自走細断型飼料イネ専用収穫機である。収穫したロールベールをラッピングすることで優れた品質の稲発酵粗飼料を調製できる。

  • キーワード:稲発酵粗飼料、細断型切断、混合攪拌、梱包密度、ラッピング、発酵品質
  • 担当:中央農研・関東飼料イネ研究チーム
  • 連絡先:電話029-838-8966、電子メールijiri@affrc.go.jp
  • 区分:共通基盤・総合研究(飼料イネ)、共通基盤・作業技術、畜産草地、関東東海北陸農業・作業技術
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

飼料イネの普及拡大を図るため、圃場における収穫時の損失が少なく、作業能率と操作性に優れ、しかも品質の良い稲発酵粗飼料の調製が可能な収穫機の開発が強く望まれている。既存の飼料イネ収穫機のうち、フレール型は収穫ロスが多く、土等の異物を混入する可能性があり、また、自脱コンバイン型は収穫ロスが少ないものの、ロール成形時に切断された穂先と株元が充分に混合せず、サイレージの品質が部位により一定でないという問題がある。一方、細断型ロールベーラが開発されており、これに細かく切断したイネを投入し、ロールベールに梱包すると高品質な稲発酵粗飼料を調製できることが報告されている。
本研究では、自脱コンバイン型の収穫機をベースに、イネを細断型ロールベールに梱包し、高品質サイレージの調製が可能な飼料イネ専用収穫機を開発する。

成果の内容・特徴

  • 開発した自走式の細断型飼料イネ専用収穫機の概要を図1及び表1に示す。5条刈り自脱コンバインの台車前方に刈取り部と搬送装置を備え、その後方に、ディスクカッタ(直径、切断刃20.5cm、送り刃17.5cm)を切断間隔1.5cmに組み込んだ細断装置を配置している。細断された穂先と株元は落下して、撹拌装置により籾と茎葉は混合され、搬送ベルトでロール成形室に送り梱包する。細断した収穫物を迅速かつ確実に結束できるようネット巻き装置を装備している。
  • 刈り取った飼料イネは、搬送装置で整列させて細断装置へ投入することにより、巻き付きや詰まりがなく細断され、装置下方の狭いスペースに配置した一対の水平内向きに回転する混合羽根付きの撹拌装置上に落下し混合撹拌される。また、切断所要動力は約4.5kWであり、同様に細断可能なシリンダ型カッタと比較して低馬力である。
  • 細断後の飼料イネ茎葉の切断長分布は、切断長2cm以下が約70%、2cm~4cmが約20%で、4cm以下が90%の高い割合となり、細断装置は有効に機能している(図2)。収穫時の作業能率は0.3~0.45ha/時(ロールベール8個/10a)である。
  • 乾物梱包密度は、156~166kg/m3であり、自脱コンバイン型およびフレール型専用収穫機より10~30%高い。収穫の約1ヶ月後に開封したラップサイレージは外観が良好であり、従来の自脱コンバイン型専用収穫機で調製したものよりも品質がよい(図3)。

成果の活用面・留意点

  • 平成20年度に(株)タカキタから市販化の予定である。
  • 市販のコンバイン型収穫機と同様に操作可能である。
  • 飼料イネに露が付着している間は、混合撹拌性能が少し劣る場合がある。

具体的データ

図1 自走細断型ホールクロップ収穫機表1 主要諸元

図2 茎葉切断長の分布図3 ラップサイレージの外観および発酵品質(梱包1ヶ月後)

 

その他

  • 研究課題名:関東地域における飼料イネの資源循環型生産・利用システムの確立
  • 課題ID:212-b
  • 予算区分:地域農業確立総合研究「関東飼料イネ」
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:井尻 勉、石川哲也、千田雅之、石田元彦