食味の良い夏そば新品種「なつみ」

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要約

そば「なつみ」は、夏そばとしては食味や麺帯形成性に優れる。「しなの夏そば」に比べ、草丈が高く、主茎節数、1株花房数がやや多く、子実重、千粒重はやや少なく、容積重はやや重い。製粉歩留りは同程度で、ルチン含量は多い。

  • キーワード:そば、夏型、食味、ルチン
  • 担当:中央農研・北陸水田輪作研究チーム
  • 連絡先:電話029-838-3246、電子メールnarc-seika@naro.affrc.go.jp
  • 区分:関東東海北陸農業・北陸・水田作畑作、作物
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

国産そばは輸入そばに比べて風味が高く、嗜好の高級化傾向から実需者に高い評価を受けている。地域興しの一つとして、地場産そばを使った手打ちそばの提供や、そばを原料とした加工品の販売などが増えている。夏そばは、そばの消費の多い夏場に新そばとして提供できる点で利用価値が高いが、従来品種では秋そばに比べ生産性や食味が劣るため栽培面積が限られている。しかし、秋そばの夏場の利用は在庫量が不安定で収穫後の時間経過による品質低下が認められ、産地からは品質の良い夏そばが強く求められていた。そのため、夏から初秋に新そばとして提供できる食味の良い夏そば品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 「なつみ」は1992年度に「テンピスト」、「キタワセソバ」、「夏そば」、「しなの夏そば」の混合交配を行い、その後代から育成されたそば品種で、生態型は夏型である。1993年度にF2、F3世代を進めた。1994年度に480個体から栽培特性、粒特性で14個体を選抜し、1996年度の系統予備試験で7系統を選抜した。1997年度の生産力検定試験で有望な系統である新系蕎96-10に「北陸3号」の系統名を付与し、栽培適性を検討してきた(表3)。
  • 開花期は「しなの夏そば」に比べ1日遅く、成熟期は5日遅い。草丈、主茎長は「しなの夏そば」に比べ長く、主茎節数、分枝数はやや多い。耐倒伏性は同程度である。
  • 子実重、千粒重は「しなの夏そば」に比べやや少なく、容積重はやや重い。
  • 製粉歩留りは「しなの夏そば」と同程度で、ルチン含量は多い。
  • 熊本県では夏型の「キタワセソバ」に比べ食味に優れ、前年産の秋そば「阿蘇在来」と比較しても同程度である(表1)。また、新潟県では「キタワセソバ」より製麺性(麺帯形成性)に優れる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 「なつみ」は生態型が夏型であることから、寒冷地以南の夏そば栽培に適応する。
  • 耐湿性は強化されていないので、排水対策を要する。
  • 脱粒性は改善されていないので、適期収穫に努める。
  • 計画的な種子更新を図り、特性の維持に努める。
  • 熊本県、新潟県で食味や製麺性の良い夏そばとしての利用が予定されている。

具体的データ

表1 熊本県における食味官能試験

表2 新潟県における製麺試験

表3 なつみの主要特性

その他

  • 研究課題名:北陸地域における高生産性水田輪作システムの確立
  • 課題ID:211-k
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:1992~2006年度
  • 研究担当者:伊藤誠治、山口修、堤忠宏、大澤良、馬場孝秀、中村恵美子、荒川明、林敬子