うどんの加工・調理における放射性セシウムの加工係数

要約

うどんは茹で調理により、生麺と乾麺ともに、麺の太さに関わらず、放射性セシウム濃度は茹でる前の10 %以下に低下し、茹で調理前の麺に含まれる放射性セシウムの80 %以上が茹で麺から除去される。

  • キーワード:放射性セシウム、うどん、生麺、乾麺、加工係数
  • 担当:放射能対策技術・移行低減
  • 代表連絡先:電話 029-838-7991
  • 研究所名:食品総合研究所・放射性物質影響研究コーディネーター、食品分析研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

一般食品に含まれる放射性セシウム濃度の基準値(134Csと137Csの濃度の合算値)は、食品衛生法で100 Bq/kgと規定されており、正確なリスク評価・管理のためには、その加工・調理過程における放射性セシウムの動態も把握する必要がある。国内産小麦由来の小麦粉のほとんどは中力粉であり、国内産小麦粉の50 %以上がうどん等の日本麺加工に使用されていることから、うどん生麺と乾麺への製麺加工と茹で調理での放射性セシウムの動態を解明し、正確な科学データを行政や食品産業、および消費者に提供し、リスク管理や食品への放射能影響に関する正しい理解促進に役立てる。

成果の内容・特徴

  • 小麦粉からの製麺加工では、生麺(太麺と細麺)及び乾麺(太麺と細麺)の加工係数【加工後の放射性セシウム濃度(Bq/kg、新鮮重)/ 加工前の放射性セシウム濃度(Bq/kg、新鮮重)】は、それぞれ0.7と1.0である(表1)。生麺の場合、製麺時に加えた水(小麦粉100に水31)による希釈効果により、乾麺よりも加工係数が低下する。
  • 生麺(太麺と細麺)と乾麺(太麺と細麺)を、各麺に応じた食べ頃の茹で時間で茹で調理すると、加工係数は0.04~0.06の範囲となる(表2)。うどんは茹で調理により、生麺と乾麺ともに、麺の太さに関わらず、放射性セシウム濃度は茹でる前の10 %以下に低下する(図1)。
  • 生麺と乾麺の茹で調理による、放射性セシウムの残存割合【調理後に含まれる放射性セシウム(Bq)/ 調理前の麺に含まれる放射性セシウム(Bq)×100】(%)を計算すると、茹で調理前の麺に含まれる放射性セシウムの12~20 %が茹で麺に残存している(図2)。麺から除去された放射性セシウムは、茹で湯に62~70 %、すすぎ水に8~16 %が存在している(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 小麦粉の放射性セシウム濃度に加工係数をかけると、加工麺の放射性セシウム濃度となり、生麺や乾麺の放射性セシウム濃度が推定できる。
  • 行政のリスク管理や食品中の放射性物質の正しい理解促進に活用できる。しかし、実際の商品では、加工・調理での加水量や工程が製造者によって異なることから、この加工係数の数値と完全には一致せず、幅がある。
  • うどん(小麦粉を用いた日本麺)では、適切な茹で時間で十分な低減効果が得られる。さらなる長時間の茹で調理では放射性セシウム濃度は低下しないことに留意する。

具体的データ

表1~2、図1~2

その他

  • 中課題名:農作物等における放射性物質の移行動態の解明と移行制御技術の開発
  • 中課題整理番号:510b0
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2012~2014年度
  • 研究担当者:八戸真弓、濱松潮香、内藤成弘、松倉潮
  • 発表論文等:
    1)八戸ら(2014)食科工誌、61(1):34-38
    2)八戸ら(2015)食科工誌、62(1):56-62
    3)八戸ら(2015)食科工誌、62(1):1-26