ヨーネ病の早期診断法に用いる遺伝子組換え抗原

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要約

ヨーネ菌遺伝子発現ライブラリーを作製し、2つのインターフェロン・ガンマ(IFN-γ)誘導抗原遺伝子クローンを得た。これらの 遺伝子組換え抗原は、ヨーネ菌感染牛由来末梢血単核球に対して高いIFN-γ誘導能を示す。さらに、抗インターロイキン10(IL-10)抗体を添加する とIFN-γ産生量が増加し、ヨーネ菌の感染を高感度に検出できる。

  • キーワード:ウシ、ヨーネ菌、ゲノムライブラリー、IFN-γ、IL-10
  • 担当:動物衛生研・免疫研究部・免疫機構研究室
  • 連絡先:電話029-838-7857、電子メールwww-niah@naro.affrc.go.jp
  • 区分:動物衛生
  • 分類:科学・普及

背景・ねらい

鳥型結核菌の亜種であるヨーネ菌は、慢性の難治性の下痢を特徴とする法定伝染病であるヨーネ病を引き起こす。本病は近年全国的に摘 発頭数が増加傾向にあり、新たな予防・診断法の開発が急務とされている。IFN-γ検査法は、抗酸菌感染の初期に上昇する細胞性免疫応答を測定する手段と して、ヨーネ菌感染の早期診断への利用が検討されているが、報告されている抗原の特異性が問題点の一つである。そこでヨーネ菌の遺伝子及び発現タンパク質 を解析し、遺伝子組換え抗原を作製し、特異性及び感度の高い検査法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 発現ベクターを用いたヨーネ菌ゲノムライブラリーを作製し、IFN-γ誘導活性の測定により、2つの陽性クローンを同定した。各クローンにおいて発現が予想されるタンパク質(Map39及びMap41)は、結核菌のPPE family proteinと高い相同性を示し、特徴的な配列からヨーネ菌のPPE family proteinであることが示唆される。
  • Map39及びMap41について組換えタンパク質を作製し、精製抗原を作出した。これらの抗原はヨーネ菌感染牛由来末梢血単核球のIFN-γを誘導するが、健康対照牛では有意のIFN-γ産生は認められない(図1)。さらにMap39及びMap41抗原刺激によるIFN-γ産生は、ヨーネ菌抗原PPDと同様に抗IL-10抗体添加により増加する(図2)。
  • 組換えMap39及びMap41抗原タンパク質に対するモノクローナル抗体を作製し、ヨーネ菌ATCC19698株全菌体タンパク質を用いたイムノブロッティング法により、Map39及びMap41抗原のヨーネ菌での発現を確認できる(図3)。
  • PPE family proteinと予想されるMap39及びMap41抗原の遺伝子は、PCR法により鳥型結核菌には認められるが、他の抗酸菌には認められない。

成果の活用面・留意点

  • 従来のIFN-γ検査法に用いられているヨーネ菌PPD抗原は多数の抗原物質を含有しているのに対し、Map39及 びMap41抗原は単一の組換えタンパク質抗原であり、ヨーネ菌実験感染牛では非感染牛に比べて有意に高いIFN-γ産生が認められたことから、PPD抗 原に替わるIFN-γ検査用抗原として利用できる。
  • 抗IL-10抗体添加によりMap39及びMap41抗原刺激後のIFN-γ産生が増加することから、本抗原によるIFN-γ検査法の感度を高めることができる。
  • Map39及びMap41は組換えタンパク質として大量産生でき、安定して抗原を供給することができる。
  • 作製したヨーネ菌ゲノムライブラリーを利用して、本抗原以外にもヨーネ病の診断法の改良や、発病機構の解明などに有用な抗原遺伝子をクローニングすることが可能である。

具体的データ

図1 非感染牛及びヨーネ菌実験感染牛におけるIFN-γ応答の比較

 

図2 抗IL-10抗体添加による
IFN-γ産生増加

 

図3 PPE抗原に対するモノクローナル抗体のイムノブロッティング像

 

その他

  • 研究課題名:ヨーネ菌の抗原解析と診断・予防法への応用
  • 課題ID:13-04-03-01-09-05
  • 予算区分:交付金
  • 研究期間:2003∼2005年度
  • 研究担当者:永田礼子、宗田吉広、森 康行
  • 発表論文等:Nagata et al. (2005) Infect. Immun. 73:3778-3782.