牛初乳の凍結融解処理は牛白血病の感染性を失わせる

要約

牛白血病ウイルスの感受性が高い羊に、凍結融解処理した牛白血病陽性牛の初乳から分離した白血球を接種しても、感染が成立しない。牛白血病ウイルス伝播防止対策の一つとして凍結融解した初乳の使用が有効である。

  • キーワード:牛白血病、初乳、凍結融解、伝播防止
  • 担当:家畜疾病防除・ウイルス感染症
  • 代表連絡先:電話 029-838-7708(情報広報課)
  • 研究所名:動物衛生研究所・ウイルス・疫学研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

牛白血病ウイルス(BLV)の伝播は感染リンパ球の体内への侵入により成立するが、その経路には濃厚な接触や吸血昆虫そして人為的な原因による水平感染と親子間の垂直感染があげられる。このうち感染母牛の初乳を介した子牛への感染の危険性には不明な点が多い。また、初乳の凍結融解処理による牛白血病プロウイルスの不活化については、熱処理とともに牛白血病対策として用いられているが、具体的な科学的データが乏しい。そこで、BLV感染母牛由来初乳のBLV感受性が高い羊への腹腔内接種試験により、初乳中ウイルスの感染性の確認と初乳の凍結融解処理によるBLV伝播防止の検討を行う。

成果の内容・特徴

  • BLV陽性牛の初乳から分離した白血球を接種した羊2頭(No.1および2)では、接種3および4週後には末梢白血球中にBLV遺伝子がPCR法により検出され、接種5および6週後にはBLV抗体が寒天ゲル内沈降反応および受身赤血球凝集反応により検出される(図1:試験1)。
  • BLV陽性牛の初乳を?25°Cで24時間凍結して融解後、分離した白血球を接種した羊では、接種9週後までBLV遺伝子およびBLV抗体ともに検出されない(図1:試験2)。
  • さらに同様に処理した白血球を再接種しても接種29週後までBLV遺伝子およびBLV抗体ともに検出されない(図1:試験2)。
  • 初乳を介した子牛へのBLV伝播防止には、凍結融解した初乳の使用が有効であることが示され、農家への飼養管理における指導に活用できる。

普及のための参考情報

  • 普及対象:対象は全国の酪農家、肉牛農家、臨床獣医師、家畜保健衛生所職員
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国
  • その他:
    1)初乳はジッパーバック等に小分けしてから24時間以上凍結させること。
    2)農林水産省から公表される牛白血病防除のためのガイドラインに掲載予定。

具体的データ

図1

その他

  • 中課題名:ウイルス感染症の発症機構の解明と防除技術の確立
  • 中課題整理番号:170a1
  • 予算区分:RS事業
  • 研究期間:2010?2012年度
  • 研究担当者:菅野 徹、石原涼子、畠間真一、尾宇江康啓(北海道)、枝松弘樹(北海道)、今野泰博(北海道)、立花 智(北海道)、村上賢二(岩手大)
  • 発表論文等:Kanno T. et al. (2014) J. Vet. Med. Sci. 76(2):255-257