BSE感染牛の骨格筋における異常プリオン蛋白質の蓄積部位

要約

臨床症状を示している牛海綿状脳症(定型BSE)感染牛では、骨格筋内で神経線維末端が入り込む筋紡錘に異常プリオン蛋白質が蓄積する。

  • キーワード:BSE、プリオン、骨格筋、筋紡錘、神経線維終末部
  • 担当:家畜疾病防除・プリオン病
  • 代表連絡先:電話 029-838-7708(情報広報課)
  • 研究所名:動物衛生研究所・インフルエンザ・プリオン病研究センター
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

牛海綿状脳症(BSE)は牛における致死的な神経変性疾患である。筋組織における異常プリオン蛋白質(PrPSc)の局在がBSE感染ハムスターや非定型BSE感染牛で報告されているが、臨床症状を示している定型BSE 感染牛については、筋肉中に感染性ならびに、極微量のPrPScは検出されているものの、その蓄積部位は不明のままである。そこで定型BSE感染牛の筋組織におけるPrPScの蓄積部位を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 定型BSE野外発生例3頭、定型BSE経口接種牛28頭(発症牛6頭、未発症牛22頭)及び定型BSE脳内接種牛12頭(発症牛9頭、未発症牛3頭)、計43頭の定型BSE感染牛の食用に供される筋肉(骨格筋)におけるPrPScの蓄積の有無とその蓄積部位を検査する。
  • 骨格筋におけるPrPScは、発症期の6頭(経口接種牛4頭、脳内接種牛2頭)の筋紡錘で検出され、BSE発症前の14頭の牛(経口接種牛13頭、脳内接種牛1頭)の筋紡錘では検出されない。
  • 定型BSE野外発生例3頭の筋紡錘からPrPScが検出され、これらの牛は発症期であったと考えられる。
  • PrPScの蓄積は筋紡錘のみに局在し、錘外筋線維(いわゆる筋組織)、神経筋接合部および筋間末梢神経線維には検出されない(図1)。
  • ウエスタンブロット法では同じ筋肉のサンプルであってもPrPScが検出できないことがある(図2)。これは、サンプル中の筋紡錘の有無によると考えられる。

成果の活用面・留意点

  • PrPSc沈着は中枢神経系に蓄積したPrPScが遠心性に末梢組織へと伝播したと推察される。
  • 採材に当たっては、筋紡錘が多数分布する眼筋や顔面筋等を含めるように注意する。

具体的データ

図1~2

その他

  • 中課題名:プリオンの異常化機構の解明とBSE等のプリオン病の清浄化技術の開発
  • 中課題整理番号:170b2
  • 予算区分:委託プロ(BSE)
  • 研究期間:2008~2012年度
  • 研究担当者:岡田洋之、宮澤光太郎、岩丸祥史、今村守一、舛甚賢太郎、松浦裕一、福田茂夫、藤井貴士、藤井啓、陰山聡一、吉岡 都、村山裕一、横山隆
  • 発表論文等:Okada H. et al. (2014) J. Vet. Med. Sci. 76(1):103-107