相対ウレイド法から推定した大豆の窒素固定寄与率の品種間差

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要約

根粒活性の低い圃場条件下で,普通大豆11品種の相対ウレイド値(窒素固定依存度)は,開花期には8~30%,莢伸長期には14~34%,子実肥大期には11~70%を示し,品種間差が大きい。うち8品種はいずれの時期も50%以下で土壌窒素の収奪量が多い。

  • キーワード:大豆,相対ウレイド値,根粒寄与率,品種,窒素
  • 担当:作物研・畑作物研究部・豆類栽培生理研
  • 連絡先:電話029-838-8932、電子メールnnaka@affrc.go.jp
  • 区分:作物・夏畑作物
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

わが国の水田転換畑では,大豆の作付回数の増加につれて収量が低下する傾向が各地で見られるようになり,それに伴う土壌窒素の低下も報告されている。その原因として,大豆の根粒固定窒素への依存度が低く,土壌窒素への依存度が高いことが考えられることから,窒素固定寄与率の品種間差を調査し,連作による収量低下や土壌窒素消耗への対応策を検討していく必要がある。そこで,大豆の全集積窒素量に対する窒素固定寄与率と高い相関がある導管溢泌液中の相対ウレイド値の品種間差を圃場条件で比較する。

成果の内容・特徴

  • 根粒の窒素固定活性が低い圃場条件下で,根粒を通常に着生する大豆11品種の相対ウレイド値は,開花期には8~30%,莢伸長期には14~34%,子実肥大期には11~70%を示し,品種間差が大きい。また,窒素固定がピークを示す時期にも品種間差が認められる(表1)。
  • 普通大豆11品種のうち8品種の相対ウレイド値は,開花期,莢伸長期,子実肥大期の全期で50%以下である。普通品種の中ではフクユタカが最も高い値を示し,子実肥大期には64.6%の値を示す(表1)。根粒超着生品種「作系4号」は,いずれの時期も全品種中で最高値を示す。
  • 品種の中には,根粒非着生大豆より低い値を示すものもある。根粒非着生大豆のウレイドは根粒由来ではないことを考慮すれば,これらの品種の窒素固定寄与率は非常に低いと推定される。大豆の吸収した窒素の約7割は子実として圃場から持ち出されるので,供試した普通品種のほとんどが土壌窒素を収奪している(表1)。
  • 異なる圃場条件(表2)で栽培したエンレイの相対ウレイド値は,開花期で13~79%,莢伸長期で32~72%,子実肥大期で17~64%の範囲内にあり,窒素施肥条件よりも土壌条件の違いの影響が大きい(表3)。

成果の活用面・留意点

  • この相対ウレイド値は,土壌無機態窒素が多く根粒窒素固定活性の低い圃場条件で求められたものであるので,そのまま一般化できる値ではない。
  • 相対ウレイド値は窒素固定依存率と高い相関があるが,依存率そのものではない。

具体的データ

表1.供試品種溢泌液中の相対ウレイド値の生育時期による推移と平均値

 

表2. 栽培圃場の土壌条件

 

表3.栽培条件がエンレイ溢泌液の相対ウレイド値に与える影響

その他

  • 研究課題名:関東・東海地域の大豆安定多収栽培技術の開発
  • 予算区分:21世紀2系
  • 研究期間:継2002-2004年度
  • 研究担当:中山則和,高橋 幹,有原丈二