タンパク質含量にフィチン、カルシウム含量を加えた豆腐加工適性評価

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要約

豆腐破断応力は、低カルシウム含量の大豆ではフィチン含量と高い負の相関を示し、カルシウム含量が高くなるとタンパク質含量との相関が高くなる。タンパク質にフィチン、カルシウム2成分の含量を考慮することで、豆腐加工適性評価がより正確に出来る。

  • キーワード:ダイズ、豆腐、タンパク質、フィチン、カルシウム、破断応力
  • 担当:農研機構・作物研究所・畑作物研究部・畑作物品質制御研究室
  • 連絡先:電話029-838-8960、電子メールnics-seika@naro.affrc.go.jp
  • 区分:作物・夏畑作物、食品
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

国産大豆は、同一品種でも栽培地や栽培年次で品質が変動し、豆腐の加工適性が安定しないことが問題となっている。よって、豆腐加工 適性の高い国産大豆が求められる一方、簡易かつ統一的な豆腐の加工適性評価法の確立が必要とされている。加工適性の中でも特に問題となっているのが豆腐の 破断応力(堅さ)であり、これに影響を及ぼす成分、特に非タンパク質成分に関する解明が求められている。そこで本研究では、主要な豆腐用国産大豆品種3品 種(フクユタカ、エンレイ、サチユタカ)を用いて、タンパク質含量に加えてフィチン、カルシウム含量と豆腐破断応力との関係について明らかにする。

成果の内容・特徴

  • フィチン含量やカルシウム含量はタンパク質含量より品種内での変動が大きく、同一品種における豆腐破断応力の産地や年次変動の要因となる。また、「サチユタカ」のカルシウム含量は、他の2品種に比べて有意に低く、(表1)全て低含量(10mg/dl以上21 mg/dl以下)に分布する。
  • フィチン含量と豆腐破断応力との相関は、低カルシウム含量の大豆では高く(r=-0.68, 0.1%水準で有意)、高カルシウム含量の大豆では低くなる(r=-0.08, 有意性なし、図1)。高カルシウム含量の場合に両者の相関が低くなる理由として、豆乳の凝固に対する緩衝作用として働くフィチンにカルシウムが結合してその作用を弱めることが考えられる。
  • 種子タンパク質含量と豆腐破断応力との相関は、フィチンの影響が大きい低カルシウム含量の大豆では低い(r=-0.24、有意性なし)が、高カルシウム含量の大豆では高くなる(図2、r=0.69, 0.1%水準で有意)。
  • 大豆3品種を、カルシウム含量が低い「サチユタカ」、カルシウム含量が高い「フクユタカ」と「エンレイ」に分類すると、豆腐破断応力に対するタンパク質・フィチン含量の重相関は同程度に高くなる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 大豆をカルシウム含量の高低で分類した上でタンパク質、フィチン含量を考慮することにより、タンパク質含量のみの従来の方法より高い精度で豆腐加工適性を評価できる。
  • 本研究では生絞り法で調製した豆乳を用い、塩化マグネシウム(6水和物)0.25%を凝固剤として使用して豆腐を作製している。
  • 本研究では、農業・生物系特定産業技術研究機構の各研究センターおよび府県の農業試験研究機関から入手した2001年度から2004年度産大豆種子を試料に用いている。

具体的データ

表1.タンパク質・フィチン・カルシウム3成分の含量の品種ごとの平均と変動

 

図1.フクユタカ、エンレイ、サチユタカ3品種におけるフィチン含量と豆腐破断応力との相関

 

図2.タンパク質含量と豆腐破断応力との相関

 

表2.各成分と豆腐破断応力(0.25% 塩化マグネシウム)との相関

 

その他

  • 研究課題名:豆腐加工適性に関与する子実非タンパク質成分の特性解明
  • 課題ID:08-02-04-01-05-05
  • 予算区分:ブラニチ2系
  • 研究期間:2003∼2005年度
  • 研究担当者:戸田恭子、中村善行
  • 発表論文:
    1) Kyoko Toda et al. (2003) Breeding Sci. 53: 217-223
    2) Kyoko Toda et al. (2006) J. Sci. Food Agric. 86: 212-219