温暖地の稲麦二毛作向き多収低アミロース米水稲新品種候補系統「ミルキースター(旧系統名関東224号)」

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要約

水稲新品種候補系統「ミルキースター」は温暖地東部での熟期が早生の晩に属する低アミロース米系統である。良食味で縞葉枯病抵抗性を有し、晩植で多収である。麦跡栽培向けの品種として期待できる。

  • キーワード:イネ、麦跡、晩植、多収、縞葉枯病抵抗性、良食味
  • 担当:作物研・稲マーカー育種研究チーム、低コスト稲育種研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-8950
  • 区分:作物、関東東海北陸農業・関東東海・水田作畑作
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

関東は稲麦二毛作地帯が多いが、麦跡で生産された米の市場評価は低く、市場性の高い麦跡栽培向け品種が生産現場から求められている。麦跡の晩植栽培での良食味米生産の一つの手法として、低アミロース米品種の利用が考えられ、群馬県や埼玉県では「ミルキープリンセス」の産地が形成されている。しかし「ミルキープリンセス」は収量性が不十分であるため、晩植で多収・良質の低アミロース米品種を育成しようとした。

成果の内容・特徴

  • 「ミルキースター」は耐倒伏性が強く良食味の「東北168号」と縞葉枯病抵抗性の低アミロース米品種「ミルキープリンセス」の交雑後代より育成された低アミロース米系統である。
  • 出穂期は「ミルキープリンセス」より1日遅く、成熟期は2日晩生で、育成地では“早生の晩”熟期に属する(表1)。
  • 稈長は「ミルキープリンセス」並である。穂数は「ミルキープリンセス」より少なく、草型は“偏穂重型”である(表1)。
  • 晩植栽培での玄米重は「ミルキープリンセス」「朝の光」よりも12%多収である(表1)。
  • 多収要因は、千粒重・登熟歩合は同等でm2当たりの穂数が少ないものの、一穂籾数が多いため、m2当たりの籾数が多いことによる(図1)。
  • 耐倒伏性は「ミルキープリンセス」並の“強”である(表1)。
  • いもち病真性抵抗性遺伝子型はPia,Piiと推定される。圃場抵抗性は、葉いもちが“中”、穂いもちが“やや強”である。白葉枯病抵抗性は“やや弱”である。縞葉枯病には“抵抗性”である(表1)。
  • 玄米の外観品質は「ミルキープリンセス」並の“中の中”である(表1)。
  • 「ミルキープリンセス」と同じ低アミロース遺伝子Wx-mqを有し、晩植でのアミロース含有率は、「ミルキークイーン」「ミルキープリンセス」と同等の9.2%である(表1)。
  • 炊飯米の食味は「朝の光」より明らかに優り、「ミルキープリンセス」並かやや劣る(表1、表2)。

成果の活用面・留意点

  • 縞葉枯病抵抗性を持ち、晩植で「朝の光」よりも明らかに食味・収量が優るため、温暖地の稲麦二毛作栽培に向く。
  • 白葉枯病に弱いので適正な防除を行う。
  • 直播栽培にも利用できる。

具体的データ

表1.ミルキースターの特性(育成地、平成15年~平成20年)

表2 加水量を変えた食味官能試験

図1 収量構成要素(ミルキークイーンを100とした指数)

その他

  • 研究課題名:世代促進とDNAマーカーを用いた多様なアミロース変異ライブラリー等の作成
  • 課題ID:311-a
  • 予算区分:委託プロ(ブランドニッポン、加工プロ)、基盤
  • 研究期間:1998-2008
  • 研究担当者:安東郁男、根本博、石井卓朗、加藤浩、太田久稔、平林秀介、竹内善信、前田英郎、
                       井辺時雄、佐藤宏之、平山正賢、出田収、坂井真、田村和彦、青木法明