アミロース含有率を低下させるイネ第2染色体上のQTL

要約

稲良食味系統「空育162号」の有するアミロース含有率を1ポイント程度低下させるQTL(qAC2)は、第2染色体上の74.9kbの領域内にある。qAC2はデンプン粒結合型デンプン合成酵素遺伝子Wxの対立遺伝子の違いによって低減効果が異なる。

  • キーワード:イネ、アミロース含有率、QTL、食味
  • 担当:作物開発・利用・水稲品種開発・利用
  • 代表連絡先:電話029-838-8950
  • 研究所名:作物研究所・稲研究領域
  • 分類:研究成果情報

背景・ねらい

稲品種の一層の食味向上は、国産米の競争力強化のため重要な育種目標の一つである。良食味化の一つの方向性として低アミロース米品種の育成が進められている。しかし、アミロース含有率が低すぎると、米が白濁する、炊飯米が粘りすぎる、炊飯米に糯臭がするなどの特徴を示す。そのため、「コシヒカリ」などの食味をさらに改良した品種を育成するためには、アミロース含有率を1~3ポイント精緻に下げる意義が大きいと考える。そのための素材として北海道立総合研究機構が育成したアミロース含有率がやや低い良食味系統「空育162号」に注目し、関連する遺伝子の解析と育種的利用を図る。

成果の内容・特徴

  • 「いただき」の遺伝的背景で「空育162号」の対立遺伝子がアミロース含有率を1ポイント程度低下させる遺伝子座qAC2は、第2染色体上のDNAマーカーKID3001とKID5101の間の74.9kbの領域内に存在する(図1A)。
  • デンプン粒結合型デンプン合成酵素遺伝子の対立遺伝子Wxbを有する「いただき」を遺伝的背景にした準同質遺伝子系統(NIL110)は、「いただき」よりもアミロース含有率が1ポイント程度低下し、アミロース含有率の低減効果がある(図1B)。この系統の炊飯米の表層の粘りは少し強くなる(図1C)。
  • 「空育162号」の遺伝子qAC2KuikuWxaの遺伝的背景でアミロース低減効果を示さず(図2)、さらにqAC2KuikuWxbの遺伝的背景で、低アミロース遺伝子du1あるいはdu2と集積すると低減効果がなく、du3と集積する低減効果がある(図2)。
  • 成果の活用面・留意点
  • このQTL情報は、「空育162号」を供与親とした育種材料からアミロース含有率がやや低い系統をDNAマーカー選抜するために利用できる。
  • 本研究は、「いただき」に対して「空育162号」の遺伝子qAC2Kuikuを導入した系統を作物研究所圃場で栽培して得られた結果であり、検出されたアミロース低減効果は地域および導入系統毎に確認する必要がある。

具体的データ

その他

  • 中課題名:米粉等加工用・業務用水稲品種の育成及び米の未利用成分利用技術の開発
  • 中課題整理番号:112a0
  • 予算区分:委託プロ(次世代ゲノム基盤、新農業展開・QTL領域、DNAマーカー)
  • 研究期間:2004~2015年度
  • 研究担当者:竹内善信、久野陽子、三枝大樹(宮崎県総農試)、鈴木啓太郎、平林秀介、出田収、青木法明、梅本貴之、石井卓朗、安東郁男、加藤浩、根本博、井邊時雄
  • 発表論文等:Takemoto-Kuno Y. et al. (2015) Theor. Appl. Genet. 128:563-573