緑茶飲料製造残渣サイレージの給与によって泌乳牛からのメタン産生が抑制される

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要約

泌乳牛用完全混合飼料(TMR)に緑茶飲料残渣サイレージを5、10および15%の乾物割合で配合することにより、泌乳牛からのメタン産生を1日当たりそれぞれ9.7、17.1および22.2%抑制することができる。

  • キーワード:飼育管理、乳用牛、緑茶飲料残渣、サイレージ、メタン、飼料作物栽培・調製・評価
  • 担当:畜産草地研・飼料調製給与研究チーム
  • 連絡先:電話0287-37-7806、電子メールwww-nilgs@naro.affrc.go.jp
  • 区分:畜産草地
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

反芻動物のルーメン内では飼料の炭水化物からメタンが生成されるが,その量は飼料エネルギーの5~8%を占めることが知られている。メタンは温室効果ガスのひとつであり、地球温暖化防止の観点から反すう家畜からのメタン産生の抑制が求められている。最近、タンニン含有飼料の給与により反芻動物からのメタン産生は減少することが報告されている。緑茶飲料残渣サイレージ(TGS)は、タンニンを約7.6~9.2%含有し、反芻動物からのメタン産生に抑制効果が期待される。そこで、TGSの給与が泌乳牛のメタン産生抑制に及ぼす効果を明らかにする。

成果の内容・特徴

  • 泌乳牛用TMR中の大豆粕およびアルファルファヘイキューブの一部をTGSに代替し、その割合が乾物比で0,5,10および15%となるよう4種類のTMR(TMR1、TMR2、TMR3およびTMR4)を調製し(表1)、2~5産のホルスタイン種泌乳牛4頭(平均体重676kg、平均分娩後日数131日)を用いた4×3ユーデン方格法による消化試験の結果である。
  • TGS給与により、乾物摂取量は低下する傾向にあったものの、乾物、酸性デタージェント繊維および中性デタージェント繊維の消化率に統計的な差は認められない(表2)。
  • 1日当たりのメタン産生量(l/日)は、TMR1、TMR2、TMR3およびTMR4の順に670.6、605.6、556.0、522.0であり、対照区のTMR1に比べ、TMR2では9.7%、TMR3では17.1%、TMR4では22.2%の抑制が認められる。同様に、乾物摂取量当たりメタン産生量(l/kgDMI)および総エネルギー摂取量当たりのメタン産生量も、茶系飲料残渣の配合割合が多いほど少なくなる(表3)。

成果の活用面・留意点

  • 泌乳牛からのメタン抑制を目的とした飼料設計等の研究に活用できる。
  • 緑茶飲料残渣サイレージの給与割合が10%を超えると採食量や乳量の減少が認められる。

具体的データ

表1.緑茶飲料残渣サイレージ1)混合TMR2)の構成と化学成分

表2.乾物摂取量、消化率および乳生産

表3.泌乳牛からのメタン産生量

その他

  • 研究課題名:発酵TMR利用のための大規模生産・調製・流通・給与技術の開発
  • 課題ID:212-f
  • 予算区分:エサプロ
  • 研究期間:継2006~2010年度
  • 研究担当者:塩谷 繁、額爾敦巴雅爾(重点支援)、松山裕城、細田謙次、西田武弘(国際農研)
  • 発表論文等:1)額爾敦ら(2005)日本畜産学会報76(3)295-301