二毛作トウモロコシの播種作業時間を大幅に削減可能な耕うん同時播種技術

要約

トウモロコシ-イタリアンライグラスの作付体系で、トウモロコシ播種時に縦軸型ハローと真空播種機を複合した耕うん同時播種機を用いれば、慣行と同等のトウモロコシ収量が得られ、耕うんから除草剤散布までの作業時間は58%、播種費用は7%削減できる。

  • キーワード:飼料二毛作、耕うん同時播種、播種費用、作業時間、燃料消費量
  • 担当:自給飼料生産・利用・大規模飼料生産
  • 代表連絡先:電話 029-838-8611
  • 研究所名:畜産草地研究所・家畜飼養技術研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

夏作トウモロコシ( Zea mays L.)を基軸とした飼料作物の二毛作は我が国の暖地、温暖地における多収作付体系として重要であるが、4~5月に冬作の収穫作業と夏作の耕うん播種作業が集中し、繁忙期が発生する。このため、本研究では、主要な冬作飼料作物であるイタリアンライグラス(Lolium multiflorum Lam.)収穫跡でのトウモロコシ播種作業時間を短縮することを目的とし、耕うん作業を簡略化するとともに播種作業を同時工程で行う縦軸型ハローを用いた耕うん同時播種技術を開発し、慣行耕起播種と比べて同等の収量を継続して得られることを実証した。

成果の内容・特徴

  • 供試した耕うん同時播種機は、個々に市販されている縦軸型ハローとローラ、油圧で昇降できるPTO中間軸付きヒッチ、真空播種機を組み合わせた作業機である(図1)。耕うんの作業幅は2.5mで、75cm条間のトウモロコシを4条播種することができる。
  • 耕うん同時播種ではトウモロコシの慣行播種に要する反転耕、砕土、撹拌整地、播種、鎮圧の5工程を、簡易耕うん播種1工程で代替可能である(表1)。慣行播種の全7工程を3工程に削減することにより、耕うん同時播種では慣行播種に比較し、燃料消費量の67%、作業時間の58%を削減可能である(表1)。耕うん同時播種における全作業時間および燃料消費量はそれぞれ5.7h/ha、27.4L/haである。
  • イタリアンライグラス収穫跡(褐色低地土)に耕うん同時播種されたトウモロコシの乾物収量は慣行播種と同等であり、連年安定性も高い(図2左)。栃木県那須町における現地実証試験(黒ボク土)においても、耕うん同時播種は農家の慣行播種作業体系と比べて同等の収量が得られている(図2右)。
  • 都府県のコントラクターの平均収穫作業請負面積は40haであることから、播種作業についても受託面積を40haと想定した場合の耕うん同時播種に要する費用および作業時間を試算すると、播種方法として耕うん同時播種を選択することで、トウモロコシ乾物1kgあたりの播種費用は12.1円から11.2円となり、約7%の削減ができる(表2)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:飼料生産を受託するコントラクターおよび大規模生産者
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:都府県の飼料二毛作(トウモロコシ-イタリアンライグラス)作付地域(約1,800ha)
  • その他:残根の詰まり等を避けるため、耕深を15cmより浅くし、再生草丈が50cmに達する前に作業することが望ましい。当該作業機は88kW程度のトラクタを必要とする。連年栽培による耕盤形成の危険性があるため、イタリアンライグラス作付前にプラウによる反転耕を行うか、トウモロコシ作付前に数年に一度の反転耕を行うことが望ましい。

具体的データ

図1~2,表1~2

その他

  • 中課題名:大規模作付に適した飼料作物の省力安定多収栽培技術の開発
  • 中課題整理番号:120c1
  • 予算区分:交付金、委託プロ(低コスト)
  • 研究期間:2008~2014年度
  • 研究担当者:住田憲俊、森田聡一郎
  • 発表論文等:住田ら(2015)日草誌、61(1):12-16