シロクローバの組織・細胞における簡便な凍結保存法の開発

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要約

  • 担当:東北農業試験場 草地部 牧草育種研究室
  • 部会名:畜産
  • 分科会名:草地
  • 分類:(3)

成果の内容・特徴

  • 技術・情報の内容及び特徴
     1. 1.2Mソルビトールを含む寒天培地で4度C、2日間前培養した茎頂組織を ガラス化液(PVS2:30%グリセリン、15%エチレングリコール、15%DMS0、0.4Mしょ糖、 B5培地)を用いて25度Cでは5分間、0度Cでは15分間処理して細胞を脱水させて から液体窒素に入れガラス化させた場合に80%以上の高い生存率が得られ、また、 アカクローバやエジプシアンクローバでも約50%の生存率であった(表1、表2)。
     2. 前培養した茎頂を3Mグリセリンと0.4Mしょ糖を含むB5培地に入れ、25度Cで10分間処理 を行なった後、-30度Cのフリーザー内に入れて約1時間細胞を凍結脱水後、液体窒素中 に入れて保存する簡易凍結保存法でも80%以上の高い生存率が得られた(表3)。
     3. メリステマティクカルスは0.6Mソルビトールの含む液体培地で25度C、16時間前培養した ときに耐凍性が最も高く、PVS2による最適処理時間は25度Cでは7分間、0度Cでは 20分間であった。カルスの増殖率は、簡易凍結保存法で最も高く(表4)、簡易凍結保存法がカルス組織の保存法として きわめて有効であると考えられた。
  • 技術・情報の適用効果
    他殖性マメ科牧草シロクローバの育種資源の圃場での保存は、モザイク病等による 有用な遺伝子型の損失の危険性が極めて高く、その維持管理に多大の経費と労力 を必要とした。しかし、簡易凍結保存法を用いることによりコンパクトで大量に、さらに 安全で、長期に保存が可能となる。
  • 適用の範囲
    シロクローバの育種資源の保存に適する。
  • 普及指導上の留意点
    液体窒素ボンベを低温室に保存し、液体窒素が不足しないように補充に 十分注意すること。

具体的データ

表1 ガラス化法により凍結保存したシロクローバ登頂組織の生存率に及ぼす前培養の効果

表2 3種のクローバにおいてガラス化法により凍結保存した登頂組織の生存率

表3 3種類の凍結保存法で液体窒素保存したシロクローバ登頂組織の生存率

表4 3種類の凍結保存法で液体窒素保存したシロクローバのメリスティマティクカルスの増殖率

その他

  • 研究課題名:他殖性牧草の細胞組織における凍結及び融解法の開発
  • 予算区分 :特研(植物保存)、経常
  • 研究期間 :昭和63~平成2~(3)年
  • 発表論文等:Plant Science 78, 81-87. Canadian J. Botany (投稿中)